今日はなんとのっけからお詫びしなくちゃならなくなりました!
前回、ADC カートリッジの三世代のうち、第一世代が一番音がイイって書いたんですが、あれ、訂正させてください。
これもアンプが替わったことが関係してるんだと思います。
以前はそう思ってた・・・つまり、10E Mk II に代表される第一世代が最高だと思ってたんですが、今日、改めて聴き直したところ、第三世代の XLM が全然悪くない・・・どころか、むしろこちらの方がイイ!
聴き比べに使ってるレコードは前回、前々回と変わらずバッハのバイオリン・ソナタですが、今回はレオニード・コーガン&カール・リヒターのやつ。
これも名盤ですよね。
あんまり好きなんで、アナログ現役時代から持ってた日本盤に加えて、独・オイロディスク盤、それに仏・Le
chant du monde 盤と三種類揃えちゃった。
エッ? で、どれが一番イイんだ、ですって?
ううん、どれもイイなァ・・・。
決して同じ音がするわけじゃないんですが、どれが一番ってことはないです。
日本盤は、何って言うか、音が沈んだ感じでちょっと暗いんですが、だからと言ってキライじゃあない。
仏盤はやはり滑らかな美音なんですが、あまりに滑らか過ぎて、弓が弦をコスる感触が希薄。
そういう意味じゃ、独盤が一番リアルと言うべきなのかなぁ・・・。
が、それはイイとして ADC カートリッジに話を戻しますとね、この第三世代の XLM、アンプが Amphion になった今、改めて聴いてみると凄くイイんですわ。
実を言いますと、このモデルは特に欲しくて買ったわけじゃなくって、とある別の中古製品を買ったときにオマケで付いてきた・・・、それも新同品が二個。
片方は単に XLM となってて、もう一方はSuper XLM って書いてありますが、たぶん実質的には同じものでしょう。
が、入手の経緯がそんな事情でしたんで、ちょっとしか聴いてなかった・・・。
これもブログ効果のひとつですな、この記事を書くためにその気になって比較試聴してみたところ、あまりにイイ音で鳴るんでビックリした次第です。
だけど、アンプが NEC の時にはもっとずっと大人しい音で、繊細ではあるものの第一世代には及ばなかった。
ところが、今、Amphion で聴いてみるとまったく遜色ありません。
本体の方は基本的に第一世代と同じだろうと思うんですが、スタイラスに改良が施された結果じゃないでしょうか。
この第三世代に至って初めてムク針も導入されたようですし・・・。
周波数特性としては、同一の条件で測定されたものじゃないんで本当の比較にはならないのかもしれませんが、日本ビクターによる実測データを見ますと、第二世代の 10E Mk IV のような10 KHz から上での急激な減衰は見られません。
2 KHz から上で徐々に下降線をたどるものの、減衰量は 20 KHz 付近に至っても 3 dB といったところです。
ただ、第一世代ほどにはフラットじゃないんで、それが NEC のアンプで聴いた時には印象の薄さにつながってたんだろうと思います。
とにかく、Amphion ではまったく文句のない素晴らしい音で鳴ってます!
ですから、前回申し上げたことは撤回させて下さい。
オリジナル・スタイラスを見つける困難を克服してまで第一世代の 10E Mk II に拘る必要はないです。
もっとも、造りの良さに関しては第一世代に軍配が上がりますので、所有する喜びはこちらの方が大きいかもしれませんが・・・。
さてさて、そんなわけで第三世代 XLM の音の良さを再認識したのす爺ィでありますが、もともと今日おしゃべりしようと思っていたのは、こういった世代別の話じゃなくって、ADC に共通する針圧の微調整の大切さのことでした。
このインデュースド・マグネット(IM)型というのは、もともとカンチレバーを短くした上に、コイルやマグネットを取り付ける必要が無く、軽い磁性体のパイプを結合するだけという構造ですので、振動子の実行質量を極端に軽減できるという特徴があります。
ADC はこの特徴を第一世代から一貫して追及してまして、だから、当時の風潮もあってか、徹底的にハイ・コンプライアンス化して、極度の軽針圧での演奏を可能にしていました。
トラッカビリティという用語を作って宣伝してたのは、ご承知の通りシュアー社なんですが、たぶん、トラッカビリティの実際の値は ADC カートリッジの方が上だったんじゃないかと、のす爺ィは疑ってます。
スペックの上でも、初代の 10E の指定針圧は 0.5 – 1.0 gという値でして、これが不安定だという不評を買ったために改良されたのが、のす爺ィも持ってる 10E Mk II です。
が、それでも 0.5 – 1.5 g という軽針圧で、その後も、第二世代の 10E Mk IV では 0.7 g が指定針圧ですし、第三世代の XLM は 0.6 – 1.0 g と、まァどれもこれも一様に 1 g を切る針圧でトレースが可能だと謳ってます。
でね、のす爺ィが実際に使ってるモデルに関してしか断言はできないんですが、実際にそういう 1 g 未満の針圧で十分なトラッカビリティが得られます。
今、これを書きながら掛けてるのは XLM ですが、針圧は 0.8 g に設定してまして、まったく何の問題もありません。
こういうところがまた、LP プレーヤー・フェチにはタマラナイわけでして、のす爺ィが ADC を偏愛する理由の一つになってます。
ただ、こういう軽針圧で安定した演奏をさせるためには、まずもってレコードの条件が良くなきゃダメですよね。
つまり、反りやキズのあるレコードは掛けられない。
それに、いくら反りのないレコードでも多少の上下動や偏芯はあるでしょうから、組み合わせるアームは実行質量の可能な限り小さい軽量タイプがマストになります。
初代 10E が不評を買った背景には、当時・・・つまり 1966 年の段階では、ってことですが・・・ そういう条件を満たすアームがまずもって少なかったのと、ユーザーの意識がそこまでついて行ってなかった、っていう事情があったんじゃないでしょうか。
アームに関して言いますと、なにしろ SME の S II improved の登場が 1972 年ですからね。
のす爺ィはやってみたことはありませんが、S II ならたぶんトレースするだろうと思います。
今、のす爺ィが組み合わせてるのが 3009R でして、このアームの実行質量がほぼ S II と同等ですので・・・。
でね、それはイイとして、問題になるのは、じゃあ、針圧をある程度増してやれば、レコードやアームの悪条件をある程度カバーできるのか、ってことです。
この話になりますと、もう一度、このカートリッジのメカニズムを見ていく必要があります。
シュアーの MM 型なんかですと、カンチレバーの反対側のマグネットの取り付けてある部分は筒状のスリーブの中に収められてますよね。
んでもって、その後端はテンション・ワイヤーでもってスリーブの後端部と結ばれてます。
スリーブがカートリッジ本体の穴に挿入されますと、その周囲をポール・ピースが取り囲むような形になる。
で、適正な針圧が掛かった時にスリーブ内でマグネットの位置がちょうど真ん中の理想的な位置に来るよう設計されてます。
設計はそうなんですが、これが何らかの事情で少々ズレたとしても、磁気回路が設計者の意図した状態から大きく外れるようなことはありません。
それにまた、テンション・ワイヤーもありますから、そもそもマグネットの位置がそうズレることは考えにくいし、仮にレコードの反りによって針先に過大な力が掛かったりしてもダンパーがスリーブ内に収められてる以上、その変形がリニアな部分を超えてしまえば自然にそこで止まる・・・つまり、それ以上にマグネットの位置がズレていくことはないでしょう。
一方、ADC の場合は、マグネットの代わりを務める磁性体のパイプはポール・ピースに取り囲まれるんじゃなく、それとほぼ一直線に縦並びするような位置関係になります。
スタイラス・アッセンブリーを完全に取り付けない状態の写真をお見せしますね。
上の写真のスタイラス・アッセンブリーは完全に取り付けられた状態にはなってません。
あともう少し左に押しつけられて、はじめて本体に密着することになるわけです。
が、そうなった暁にも、ホンのチョットだけ突き出ている磁性体のパイプは、本体側の穴の中に入るところまでは行かない、ってことが、この写真からお分かりいただけますよね。
また、そもそも本体側には浅い窪みがあるだけでして、MM 型のように長いスリーブを受け入れられるような深い穴はありません。
シュアーなんかの針交換を思い浮かべてもらえば分かると思いますが、MM 型のスタイラス・アッセンブリーは、スリーブ部分がカートリッジ本体の穴に嵌り込むことによって固定されるわけですよね。
だから、プラスチック製のホルダー部分は単にスタイラス・アッセンブリーを指先でつまみ易くする役割しか持ってない。
これが少々グラグラしていたところでカートリッジの性能には影響しません。
一方、ADC の場合は、スタイラス・アッセンブリーの固定が、他ならぬあのプラスチックのホルダーと本体との嵌め合わせによって行なわれるわけです。
ですから、この部分の役割は非常に重要で、遊びがあってグラグラしたんじゃあどうしようもありません。
10E Mk II の場合など、本体とスタイラス・アッセンブリーの嵌め合わせは非常にキツくて、グラグラどころか、引き抜くのに相当な力が要ります。
一方、カンチレバーの動きは非常に自由で、MM 型の場合に比べれば、ほとんど無制限と言っていいほどの頼り無さでもってフラフラします。
ADC の場合、コンプライアンスが非常に高いことから、針圧の掛かってない状態ではカンチレバーは 45 度くらいの角度で下に伸びてますが、これが適正針圧を掛けますと 15 度にまで撓むわけです。
でね、こんなに動きの大きいカンチレバーに取り付けられてる磁性体のパイプがですよ、本体側の窪みにちょっとだけ顔を覗かせてるポール・ピースの端っこと一直線に並んでなきゃイケないってことです。
ここで互いの位置関係がズレちゃいますと磁気回路が途切れる・・・(まァ、大げさに言えば、のハナシですけど・・・)結果になりますので、これは非常にマズイ。
エッ? そんな事態が実際に起きるのか、ですって?
うん、まァ、程度問題だとは思いますね、ズレが大きくなるに従って徐々にモンダイが顕在化してくるわけですからね。
つまり、段々と音質が低下してくる・・・。
一体、何がどうなるに従って、段々と低下してくるのかと言いますと・・・、
というところで、今日もずいぶんおしゃべりしましたし、続きは明日にでも。
フッフッフ・・・ じゃ、皆さん、良い連休をお過ごしください。