Quantcast
Channel: 昔のモノは良かった(のかなァ…?)
Viewing all 620 articles
Browse latest View live

AR という聖杯_04

$
0
0
 
さてさて、前回のクイズの答えをご一緒に考えていくとしましょうか。
エッ ご一緒に・・・って、お前も正解は知らないのか、って
 
いや、まぁ、ほぼ確実だと思う答えは出てるんですが、なにせ Thorens の出してる資料とか説明とかがあるワケじゃないんで、究極的にはのす爺ィの推測ということになります。
それにまた、実際にこの両者を・・・つまり、AR TD 150 を使い比べた経験もありませんので、ちょっと奥歯にモノの挟まったような言い方にならざるを得ないんですわ。
 
で、その答えですが、それは GAIN 様がかなり近い線を出しておられたように、外部からの振動に対する反応の違いです。
ただし、GAIN 様は恐らくスピーカーからの振動とか、要するにレコード演奏に直接関わるような類の「振動」を問題にしておられたと思うんですが、そうじゃなく、トーンアームを手で操作する際に生じる「振動」のことです。
 
AR はこれに極端に弱い。
実際にレコードを載せてスイッチを入れ、回転が定速に達したらトーンアームをアームレストから外して盤の所へ持って行きますよね。
 
すると、アームレストから外すだけで、もうかなり派手に揺れます。
おおッと、こりゃあ慎重に扱わなくっちゃ・・・ってことなりますわな。
ですが、今度は盤面に針を降ろそうとアームリフターを操作する段階で、リフターのレバーを動かすだけでもまたまたかなり揺れるんですよ。
 
ここまで敏感にグラグラしてくれますと、やっぱ、扱いにくい。
で、なんでそんなに揺れるのかと言いますと、そりゃ、まずはサスペンションが柔らかいからですが、それに加えて、トーンアームの側にある支持点がひとつだけだっていう不利な要素が大いに関係してます。
 
だって、やじろべえの頭をちょいと突っつくようなもんですから、至って簡単に動いちゃいます。
これが、TD 150 のようにある程度の距離を隔てた前後二点で支えてあれば、たとえそれがスプリングを介した支えであっても、かなりの抵抗が期待できる。
 
ですから、トーレンスはこうした不都合を除去するために三ヶ所の支持点のうち二ヶ所をアームボードのすぐ脇に配置したのだというのがのす爺ィの推測です。
これ以外の点に関しては、前回述べたように、三つの支持点にバランスよく均等に重量が掛かる AR 式の方が好ましいに決まってますからね。
 
トーレンス式にしますと、見た目の対称性こそ維持されるものの・・・と言ったところで、エト裏から見た時の視覚的な対称性など一体誰が気にするのってなもんですが〔笑〕・・・ 重量配分は不均等になります。
 
じゃあ、アーム側に二ヶ所の支持点を配置しつつ、重量配分を均等にする方法は無いのか、と申しますと、理論的にはそういうことももちろん可能です。
にもかかわらず、トーレンスはなぜそういう方法を採らなかったのか・・・
また、そもそも、AR が最初からそのようなレイアウトを採用しなかったのはなぜなのか
 
その答えは下の写真を見ていただきますと簡単に分かります。
 
イメージ 1
 
オレンジ色の二等辺三角形は前回確認した実際の支持点を示しています。
それに対して黄色の二等辺三角形が、仮に三つの支持点のうちの二つをトーンアーム側に配置した場合にどういう結果になるかを示したものです。
 
そう、二つのうちの一方はキャビネット最近はプリンスと言うらしい・・・笑)の端からハミ出しちゃいますし、もう一方はかなり右の方に位置することになります。
AR の場合は、右上のヤツに関しては収めることが可能でしょうが、それでもアームレストを立てようとしますと干渉しそうな位置になりますので、まァ避けるに越したことはない。
 
白い縦の直線は、トーレンスのように縦長のアームボードを装備した場合にメイン・フレームの端がおよそここまで来るヨ というラインを表わしてます。
ですから、その場合は、こちらもまた完全にハミ出すことになります。

念のため、仮想的に TD 150 のエト裏の写真に同じレイアウトを当てはめてみますと、ざっとこんなイメージですね。
 
イメージ 5
 
重量バランスが崩れることを敢えて容認しながら、トーレンスが三ヶ所の支持点をあのように配置したのは、恐らくこのような事情・・・ つまり、良好な操作性を確保するためだったと考えられるわけです。
 
そこで、ついでですし、この後のモデル・・・すなわち、TD 160 の場合にどうなってるのかを確かめておくことにしましょう。
TD 160 のエト裏というのは、パッと見したところ、こんな具合になってます。

イメージ 2
 
何と言いますか・・・、支持点は三ヶ所ともがえらく不規則に散らばってるように見えますよね。

実は何を隠そう、のす爺ィも今回 AR ES-1 を入手してかような問題を考察するまでは、この TD 160 の支持点の位置について、なんかよ~ワカラン配置ぢゃのぉ~と思っていました。
 
もちろん、それなりの根拠に基いて決定されているであろうことは想像に難くありませんでしたが、それがどのような根拠なのかという問題を深く考えようとはしたことがなかった。
 
ですが、今日のこれまでの議論をベースに改めてこのエト裏を眺めてみますと、ハッキリと見えてくるものがありますよね。

エッ イマイチ見えて来んぞ、ですって
ううむ、それはイケマセンな・・・。
では、上の写真にも色とりどりの線や印を補ってご覧に入れることにしましょう。

イメージ 4
 
ね、これでハッキリしたでしょう。
何のこたァない、TD 150 の三つの支持点のうち、右下の赤い矢印で示した一つだけを黄色い 印の位置からチョイと右下にズラしたものだったんですよ。
 
なぜあの支持点をズラしたのか・・・、それはトーンアームの重量を考慮した上で三点への配分をできるだけ均等にしようということだったに決まってますよね。

TD 150 をはじめとするトーレンスの他の諸モデルのような縦長のアームボードを採用しなかったのも、こうしたレイアウトを実現するためだったと推測されますし、サブ・フレームに開けられたトーンアーム用の穴が例のヘンテコな形をしてるのも、恐らくはこれに関係があるんでしょう。
 
さらに、ついでのついでとして、しんのすけ様も若干の興味を示しておられた例のターンテーブルについても一瞥を与えときましょうか・・・。

イメージ 3
 
・・・ っと、これはもう今さら説明の要もありませんよね、十字架型をしていたサブ・フレームが棺桶型になってるだけで、TD 150 と完全に同一のレイアウトです。

こうした TD 150 との同一性は、この点に関してのみならず、この機種のすべてについて言えることです。
のす爺ィが思うに、これはいわゆる現物合わせ的な手法で以って TD 150 の主要部品をひとつひとつコピーして置き換えていくことによって造られたんではないかと・・・。

そうでなかったら、ここまでソックリにはならないんじゃないでしょうか。 
だとすれば、これはトーレンスが AR のアイデアだけをコピーしたのとは違って、典型的な町工場的手法です。
のす爺ィがこのモデルに惹かれるものを感じないのはこのためです。

ただ、誤解のないよう念のために申し上げておきますが、決して性能が良くないと思ってるわけじゃありません。
仮にオーディオ・マニアであったなら、のす爺ィも欲しいと思ったかもしれません。
 
じゃ、今日はこんなとこで失礼しまして、次回はこの AR ES-1 にトーンアームを組み合わせて実際に鳴らすまでのことをおしゃべりをさせていただきたいと思います。
音も聴いていただけると思いまァす。
しゃべったり作業したりで連休でも忙しいなァ~・・・なぁんてのは真っ赤なウソ。
 
 

AR という聖杯_05

$
0
0
 
さぁて、今日は鳴らしまーす とか言いながら、実際にはもう先日来鳴らしてるんですが、おしゃべりの方は前回まで歴史的・理論的考察ばっかりでしたからね。
 
いやぁ、それにしても美しいプレーヤーですねェ・・・、米国が最も光り輝いてた時代のデザインでしょうか。
もっとも、このモデルは AR のオーナーが英国人だった時のものなんで、英国デザインかも・・・。
こんな風にプラッターのプロフィールに合わせてデザインされたダストカバーもちょっと他に例がない。


ところで、のす爺ィは初期型と後期型の二台を入手したんだ、って言ってましたよね。
この二台は色違いでもありまして、初期型がチェリー・・・、

イメージ 1

後期型がウォールナットになります。
モーターがトラブルを抱えてるのは初期型の方です。

イメージ 2
 
のす爺ィは圧倒的に初期型のチェリー色が好きなんで、後期型のモーターをこっちに載せ替えるか、もしくは初期型のキャビネットに後期型のメカを組み合わせるか、どちらかにしようと思ってました。
ですが、これが結構厄介なんですわ。
 
まずもって、結線がすべてソケットじゃなくハンダ付け・・・くらいならまだイイんですが、パイロット・ランプなんかボンドみたいな接着剤で木製キャビネットに彫り込まれた穴に埋め込まれちゃってるような有様で、何から何までがとにかく取り外すなんてことはまったく考えてない造りです。
 
で、このパイロット・ランプのデザインがまた素晴らしい
点灯してない時にはそんなもんがあることさえ気づかないちっちゃなランプがキャビネット前面の左端にひっそりと奥ゆかしく埋め込まれてまして、これが点灯した時の色がまた見事。

イメージ 3

スミマセン写真がヘタで本当の色が出てません。もっと赤味がかった実にキレイなオレンジ色です。
・・・なので、このランプもヘタに弄って壊したりは絶対にしたくない・・・〔笑〕。
 
モーターもまた、プーリーを取り去った上でないと付け外しできないようになってます。
しかも、そのプーリーはトーレンスみたいなネジ止め式じゃなくって、単純にモーターの軸にキツイ嵌め合わせで押し込んである。
 
これに関しては時計の針を外す時と同じ要領で二本のスプーンを梃子にして取り外すことができるんですが、でも、あんまり付けたり外したりを繰り返したくはない構造ですよね。
実際、時計の針にしたって、プロの時計職人は一旦取り外した針は使わずに捨てちゃって、常に新品の針を取り付けます。
 
てなわけで、何やかんや、とにかく部品の付け外しが非常に厄介にできてるんですわ。
これが故障の修理のためとかいうことになれば、そりゃ、迷うことなくやらざるを得ませんが、単に色の好みのためとなるとね・・・。
 
それに、個体全体の程度としてもウォールナットの後期型の方が圧倒的に良好なコンディションを保ってます。
なので、この際リスクを冒すことは避けて、色には目をつぶり、おとなしく後期型をそのまま使うことにしました。
 
いずれコンディションの良いモーターが手に入ったら初期型を動かしたいと思ってます。
っていうか、新品のモーターはすぐにでも買えるんですが、200 ドル以上もするんで二の足を踏んでるところです。
だって、ちゃんと動くのが一台はあるわけですしね・・・。
 
ということで、まずは裏ぶたを外して内部の掃除をしました。
ですが、このチャッチイ裏ぶたは今後もう取り付ける気はありません。
 
イメージ 4
 
トーレンスでも同じですが、この手のフローティング・タイプは、どうしても水平調整を必要とする時が来ますんで、下から簡単に手が入れられるように、裏ぶたはナシで使うことにしてます。

ただ、四隅のゴム足は裏ぶたの上から取り付けるようになってますんで、高さ調節のために裏ぶたの厚みに相当するワッシャーを噛ませました。
 
さて、そうやって準備ができたら、いよいよトーンアームの取り付けです。
こういうフワフワのサスペンションですと、やっぱ軽量級がイイですよね。
ということで、冒頭の写真でもご覧頂いたように、超の付く軽量アームの Infinity Black Widow を組み合わせました。
 
これには少し前にご報告したように Shure V15 type III が既に取り付けてあります。
超軽量級だから相性が良いというだけでなく、デザインの面でもこのアームは ES-1 にピッタリだと思います。

イメージ 5

アームベースには SME 用の穴が開いてましたんで、PD 441 の時には使ってなかった Black Widow のベースを取り出してきてホイチョイ・・・っと取り付け完了です。
  
アームが付いたら、後はプラッターとレコードを載せてメンドーな水平調整・・・
っと、意気込んだんですが、意外やこれが簡単にできちゃった。
 
前回の頁のコメント欄でしんのすけ様が、サスペンションの支持点に関して別に対称配置に拘る必要はないんじゃないかとおっしゃってたんですが、これが対称になってるおかげで水平調整がすこぶる楽チンなんですよ。
もちろん、このための対称配置ってワケじゃありません、念のため・・・。
 
が、この時に注意すべきは、プラッターの高さです。
水平になってることが重要なのは言うまでもないとして、高さが十分でないと、例のモーター・プーリーとの衝突事故が起きる可能性があります。
 
取説には 6.5 mm っていう指定がありますが、のす爺ィは不安だったので、+1 mm 7.5 mm に設定しました。
あとはクルマ用のタッチアップ・ペイントで細かなキズの補修をして、準備 OK

イメージ 6
 
さぁ、それでは組み上がったばかりの ES-1 で実際にレコードを掛けてお聴きいただきましょう。 

イタリアでもらってきたオルネッラ・ヴァノーニのレコードに夢中になって以来、カンツォーネづいちゃってますんで、やはり「あの頃の」思い出のレコードを引っ張り出してきました。

イメージ 7
 
パッティ・プラーヴォの1974 年に出たアルバムmai una signora から、事実上のタイトル曲である A
1 曲目の Quale signoraです。
 
 
いかがです、お気に召しましたぁ
だけど、V15 の中じゃtype III はやっぱりのす爺ィ好みの音とは言えんなぁ・・・。
何って言うか、どうしても薄っぺらい印象が残るんですよね。
 
ところで、この人もヴァノーニに劣らずエ□い歌が多かった。
元カレのことを考えながら別の男としてるとこだとか、3P だとか、体の関係だけのつもりだった相手と何だかんだとか・・・、この曲でも二日前にピルの服用をやめたからどーのこーのとおっしゃってます。
 
だけど、ヴァノーニと違ってあまりにもオツ○が空っぽ失礼だったんで、そういうエ□いイメージが長続きしなかった。
結局、野晒師匠言うところの「大人の歌」にまで発展して行くことができなかったんですよね。
イイ雰囲気を作ってたんですけどね・・・。
 
まッ、残念なことではありますが、のす爺ィの初級イタリア語の先生としての功績には忘れることのできないものがありました。
 
 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_01

$
0
0
 
今日は珍しくインターネットを開くとキモチの良い記事が目に付きました。
 
こういうのを見ると、日本にはまだ希望がある・・・っとのす爺ィは安心するのだけれど、ただ、この記事が批判している道徳の教科書なるものが学校で使われているのだと思うと、心は暗澹としたものにならざるを得ません。
 
今の日本の学校教育は健全な方向に向かってるんでしょうか。
日本の高級官僚は優秀な人たちだと思うんですが、日本人がより優れた国民になることを願う愛国心というものは持ち合わせてないんでしょうか・・・。
 
まさかとは思いますが、自分なりの価値観に従って行動を決め、正しいと考えることを主張することのできる立派な国民ではなく、何でもかんでもお上の言うなり、集団の言うなりになってひたすら命令に忠実、規則に忠実に動くロボットみたいなものにしておこうと考えているんじゃないのか・・・。
 
だとしたら、中・朝と変わらないですよね。
ただでさえ日本人は上からの指示に盲目的に従う傾向、空気を読んでは周囲の人に合わせようとする傾向が強過ぎるわけで、これを更に一層強めるような教育をしていたのでは国の発展は望めません。
これから人口が減って行くというのに、ますます国力が減退していきかねない。
 
誰の指示や命令であろうと、どんな規則やルールであろうと、納得できる合理的な説明のつかないようなものには従う必要ない・・・っていうか、従うべきじゃないし、従うかどうかをキチンと自分で考えることのできる国民こそがこれからの日本に求められていると思うんですが・・・。
 
いや、テーマとは無関係なおしゃべりばっかりしてて、どうもスミマセン。
新しい話題をはじめようとしますと、なんか前置きみたいなことをしないと落ち着かないもんで・・・〔笑〕。
 
ということで、実に久しぶり【歌】の書庫に帰って来ました。
日付を見るに、二年半ぶりですね。
 
ここに戻って来た理由というかいきさつというか、まッ、それはAR のターンテーブルについてのご報告の仕上げに掛けたレコードについて koj 様から頂戴したコメントがキッカケです。
 
のす爺ィが P. プラーヴォに関して、オツ○空っぽだとかナントカ、大変ケシカランことを言いまして、koj 様は別にこれに噛み付いて来られたわけでも何でもないんですが、彼女の歌Quale signoraを聴く限り、特にそうは感じられないが・・・という意味のことをおっしゃってた。
 
いや、ごもっとも まさにその通りでして、あの曲を聴いている限り、オツムが云々どころか、声も歌も大変に魅力的です。
実際のところ、若い頃ののす爺ィは彼女にメロメロになってしまいまして、イタリア語を本気でやろうと思ったのも、何を隠そう P. プラーヴォのためでした・・・とまで言っちゃあちょっと言い過ぎだな、ヴァノーニはじめ他にも好きな歌手はいたし・・・〔笑〕。
 
でも、今でもよく覚えてるんですが、この夏のイタリア滞在記の中で、イタリアの某大学のオーガナイズしていた外国人向けの夏期講座に参加した話をしましたよね、あの講座の行なわれてた海辺の避暑地では、町のあちこちに有名なクラブで行なわれる彼女のコンサートのポスターが貼られてました。
 
彼女のモノクロの顔写真に、Pazza Idea の文字がごくフツーに書かれてる大人しいポスターで、全然派手なものじゃあなかったけれど、それだけに却って知名度の高さが印象付けられる・・・そんなポスターだった。
 
そう、この pazza idea っていう言葉が流行語というか、ほとんど普通名詞になってるくらいの感じでしたからね、あの当時は。

イメージ 2

1973 年のこのアルバムもどエライ数が売れたようで、今でも中古盤は割りと簡単に手に入ります。
のす爺ィは出た当時に新品を買って持ってたんですが、ある残念な事情から手離しちゃって、未だに後悔してます。
 
上のジャケット写真は後になって買い求めた中古盤でして、盤質は残念ながらイマイチですが、音に関しては、再発 CD のこんな全集を持ってるんで・・・、

イメージ 1

中古の LP は、まぁ、ジャケットとその中に折り込まれてるイラストのために購入したようなもんです。
 
イメージ 3
 
じゃ、プチパチ音はガマンするとして、歪は特に感じられませんので、LP 音源でお聴きいただくことにしますね。
MR 針は殊更にプチパチ音に弱いという印象があるんですが、組み上がったばかりの AR ES-1 が可愛くてタマンナイんで、ガマンして下さいネ〔笑〕。

 
いかがですゥ お気に召しましたぁ
この頃がたぶん彼女の全キャリアを通じての頂点だったと思います。
 
歌詞もイイです、彼女のイメージにピッタリですし・・・、っていうか、これ以後のパッティ・プラーヴォのイメージはこの曲で作られちゃったところがありますが、いろんな解釈が可能なようにできてて飽きが来ない。
 
あの、野晒師匠が絶賛なさったオルネッラ・ヴァノーニのQuesta notte c’èほどの複合性・抽象性こそ無いものの、ヴァノーニだって70 年代にはあそこまで凝った歌を歌ってたワケじゃありませんでした。
だから、あの頃の彼女にはヴァノーニを凌ぐ色気を感じたものです。
 
とりわけ、
E poi mi hai detto; -Senti, camminiamo.-
Siamo scesi in fretta, ma restati lì...
In silenzio, soli, io ti ho stretto, stretto a me.
La tua giacca sul mio viso,
mi hai detto; -Basta, amore,
sono stanco; lo vuoi tu?-
 
・・・ってとこが最高にイイ
男の言葉をどう解釈するか・・・いろんな可能性があるんですよね。
 
sono stancoって言ってるでしょ。
この少し前で、クルマの中で彼女がうるさく質問を繰り返してるみたいなんで、それにうんざりしてこう言ってるとも取れるんですが、すぐに続けてlo vuoi tu?って尋ねてる。
 
このことからすると、セッ○スを求める彼女に、今はしたくないんだ、って言ってるように思われますよね。
だって、その直前には In silenzio, soli, io ti ho stretto, stretto a me... って言ってますしネ。
 
で、細かいところでは、このstrettoっていう単語が二回繰り返されてるでしょ。
はじめのヤツは動詞stringereの近過去を作るための過去分詞に決まってますけど、二回目のstrettoは、単に強調のためにそれを繰り返したとも取れるし、あるいは形容詞とも取れる・・・stretto a meってのをひと塊と解釈してね。
 
のす爺ィはこっちの方が好きだな。
でもって、その後の la tua giacca sul mio viso...ってのにもまたあれこれ考えさせられる。
 
男が上着を彼女の顔に被せたと取れないことはないけれど、そういう行動ってズイブンですよね。
でも、このすぐ後に、例のBasta, amore, sono stanco; lo vuoi tu? と続くわけで、そうなると、う~ん、あるいは・・・、って気がして来なくもない。
 
が、とはいえ、やっぱり、ここは直前のio ti ho stretto, stretto a meに関連付けて聴くべきでしょうな。
つまり、かなり身長のある男なんで、彼女の顔が上着に押し付けられたんだと・・・。
 
が、とにかく、このあたりの描写は、その前の部分・・・クルマの中での様子から、「少し歩こうっていう男の言葉、そして、実際には降りはしたものの二人が歩こうとはせず、その場に言葉も無く留まったっていう状況・・・。
う~ん、余韻があると言うか、何と言うか・・・、胸がキューっとなりません
のす爺ィはなるなぁ~。
 
じゃ、今日は支離滅裂のまんま、こんなとこで失礼しますね。
お休みなさ~い。
 
 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_02

$
0
0
 
今度のシリーズは【歌】の書庫で・・・とか言いながら、ウッカリして設定を変更するのを忘れてまして、結果、【オーディオ】のままになってました。
 
ただ、北仏語事始を【オーディオ】カテゴリーでやっちゃってからは、なんか、カテゴリーにそう拘ってる必要もないんじゃないか・・・って気がし始めてまして、だからこのまま行っちゃうかもしれません。
たぶん、どこからも文句は来ないだろうし・・・。
 
で、実際、オーディオに関係することもご報告したりおしゃべりしたりしますしね。
例えば、あれやこれやのカートリッジで掛けるレコードの音を YouTube にアップするようになって気づかされたことがあります。
 
これは、それまでも若干気にはなってたものの、まッ、イイか・・・って感じで等閑に付してたことですが、フォノ・アンプに高過ぎる入力電圧を入れるとやっぱり音が潰れる、ってことです。
もちろん、極端なことがマズイのは当然なんですが、普通にスピーカーで聴いてる限り、まぁ問題ないか・・・と思えるようなケースでも、やっぱり入力電圧は高過ぎないようにした方が良さそうだってことが分かって来ました。
 
それは SoundEngine で録音しながら波形を見てますと、録音レベルの高い部分で明らかに波形がおかしくなるからです。
波形と言えば、同じレコードでも CD LP とでは、当たり前なんでしょうけど、かなり波形が違います。
 
イメージ 2
 
オーディオ・マニアの方々にしてみれば、何だ、そんなことに一々驚いてるのか・・・と呆れられるんだろうなと思いますが、のす爺ィとしては、この辺のことが目で確かめられるというのは、驚きでもあり、嬉しくもあって、特に昇圧トランスの選択に当たって大いに参考になった次第です。
 
そんなわけで、実際に問題が発生していた、あるいは発生する可能性が高い組み合わせについては、今、見直しを進めてます。
問題になるのは、やっぱり出力電圧の飛び抜けて高いカートリッジ・・・具体的にはSPU Synergy がその典型ですが、Lyra Dorian も要注意です。
 
こうしたカートリッジは昇圧比の低いトランスに繋いでおく必要がありますので、カートリッジを取っかえ引っかえしたいのす爺ィにとりましては、やっぱ扱いにくい問題児ということになります。
それにつけても思うのは、やっぱのす爺ィは CD よりも LP の音の方が好きだってことですね。
単に耳が慣れてるせいかもしれませんが・・・。
 
そんなこんなで、昨日アップしたPazza idea、ラインコンタクトの方がプチパチ音が少ないかなぁ~なんて思ったんで、オルトフォンの MC Rohmann で録り直しました。
雑音の件は別にしても、これ、イイ音で鳴るんですわ。

イメージ 1
 
で、前回の頁のと差し替えるつもりで録ったんですが、オーディオ・カテゴリーでやるとなったら、比較してみたいって思われる方もおられるんじゃないかっていう気がしてきましたんで、前の V15 type III のはそのままにして、この頁に同じ曲をもう一度載せときますね。
 
MC Rohmann はご覧の通り SME M2-9 に付けました。
で、それを PD 441 と組み合わせ、オルトフォンの Verto っていうトランスを介して Vanguard II MM 入力に入れてます。


で、本題の空っぽ論争(?)に入らなきゃいけないんですが、その前に、一般論としてですね、女優とか女性歌手の色気ってぇもんについてのす爺ィなりの考えをひとくさり・・・〔笑〕。
 
まァ、別に女優や女性歌手に限ったことでもないんですが、こういう芸能人の誰かれの持つ魅力っていうのは、なべて作られたイメージによるものですよね。
だから、ああゆう人たちの本当の姿って言いますか、人間としての実体ですね、そういうものからは独立した、別個のものだと考えるのが正しい。
 
だから、彼らの私生活やら何やら・・・いや、まァ、ああゆう方々の場合は私生活もまた芸能人としてのイメージを作るためのものとして利用されると言うか、そもそも一般人の場合のような私生活ってものは無いと考えるべきかもしれません。
 
が、いずれにしましても、その人物の実体を追い求める・・・なんてのは愚の骨頂であって、飽くまでも作られたイメージをそのまま受け取って楽しむのが正しい親しみ方であると、こういうことです。
 
エッなんだ、そんなこと当然じゃねェか、って
うん、そうなんですけど、若い頃の・・・っていうと、パッティ・プラーヴォやオルネッラ・ヴァノーニに夢中になった頃ののす爺ィには、その辺のことがハッキリとは認識できてなかった。
 
これはひとつにはイタリア・・・つまり、外国のモノが対象だったから、っていう要因も関係してたと思いますね。
ほら、何の変哲もない日常の・・・なんて言い方がありますよね。
だけど、これって、場合によってはそれほど簡単な概念じゃないんですよ。
 
そりゃね、自分の生まれ育った、だからよく知ってる環境にあっては、そういう何の変哲もない日常とそうでない非日常との区別は誰にとってもハッキリしてるでしょうけど、よく知らない外国の事柄に関しては、そう簡単じゃアない。
 
具体的に言いますと、イタリア人にとっての何の変哲もない日常ってのは、日本人であるのす爺ィにとりましては、多くの場合、トンデモナク非日常であることがごくフツーだった。
しかも、当時ののす爺ィはこれらの歌をもっぱらレコードで、つまり、音だけで聴いてたわけですよ。
 
イタリアだったらテレビの歌番組なんかで実際に歌ってる姿を見ることもできましたし、これらの歌手が司会者とやり取りする言葉も、また、その時の身振りやら何やら、色々情報を取り入れる術が・・・って言うより、ひとりでに入って来ちゃうわけですよ、そういう情報が・・・。
 
だから、歌手についても、例えば、オツムがどうのこうのといった事柄もね、だいたい想像がつくし、週刊誌やら何やらでゴシップの類も取り上げられてますしネ。
でも、日本でレコードだけ聴いてますと、もっぱら歌だけで頭の中にイメージを作っちゃう結果になる。
 
分かっていただけますかね
この辺のことは別に歌だけでなく、映画なんかについても言えます。
外国映画・・・と一口に言ってもそりゃ様々ですけど、イタリア映画の場合は非常にローカルな傾向が強い。
要するに、イタリア人の観客のことしか考えてないんですわ。
 
で、そうなりますとね、映画の観客はイタリア人にとっての日常と非日常の区別を知っていないことには付いて行けない理屈になる。
で、実際、この理屈の通りの現実があるんですよ。
 
以前、【映画】の書庫でやったミケランジェロ・アントニオー二の『情事』ていう作品なんかもその典型でして、のす爺ィ的には、あれは相当なイタリア・マニアでない限りストーリーについて行けない。
結果、監督が何を表現したかったのかが分からないもんだから、愛の不毛やら不条理やらといったトンチンカンな解釈へと脱線してっちゃう。
 
あああ、今日も何を言おうとしてたのか、自分でも分かんなくなってきましたんで、もうかなりしゃべったし、この辺で失礼しときますね。
いつも支離滅裂でゴメンナサイ。
まッ、MC Rohmann で聴くPazza ideaに免じて赦してやってネ。
 
 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_03

$
0
0
 
やっぱりね・・・って感じでこういう話が出てきてるみたいですね。
 
のす爺ィはトコトン暴力反対の絶対的な平和主義者なんですが、それは軍事とか戦争とかに興味がないという意味ではありません。
・・・どころか、子供時代から一貫してかなり強い興味を持ってまして、古代以来の戦記ものやマキアヴェリ、クラウゼヴィッツといった戦争論の類も読みかじってきました。
 
そこで、わが日本についてつらつら思うんですが、上の記事にも言及のある「専守防衛」ってヤツね、あれ、日本にはムリだと思います。
今の日本にとってムリなだけじゃなく、「軍隊を持つ国」というよりはむしろ「国を持つ軍隊」だったと誰かが言ってた軍国主義時代の大日本帝国にとってもムリだったというのがのす爺ィの考えです。
 
実際のところ、沖縄戦を例外として、本土防衛はその試みさえしてないでしょ。
広島・長崎の核兵器を除けば、空襲だけ取り上げてもベトナムなんてもっと酷い状態にされて、さらに地上軍も投入されて、それでも戦い抜いて米軍を撃退してます。
 
日中戦争当時の中国だってそうですわ、何十万もの日本兵によって主な都市を占領された状態で、さらに共産党軍との内戦までやりながら戦い抜いてますよね。
世界を見渡すに、こういう国は枚挙にいとまがない・・・っていうか、むしろこれが普通。
 
でもね、持ちこたえたとか、撃退したとか言っても、そのために払った犠牲というのはハンパじゃないですよ。
つまり、敵軍が国内にまで侵入してきていて、それでも戦い続けて、中国にせよヴェトナムにせよ、たとえ外国の支援や国際情勢の助けがあったとしても、とにかく抵抗を継続するってェのは並大抵のことじゃあない。
 
日本人には到底ムリですよ。
終戦時に天皇陛下を拉致監禁して玉音放送を妨害しようと試みた一部の軍人がいたと聞いてますが、んなもん、仮に試みが成功していたとしたところでお笑い種でしかありません。
 
これに対して、幸いなことに実際にはそうはなりませんでしたけど、戦後の冷戦期、西ヨーロッパではソ連軍の侵攻に備えてどんな準備が行なわれてたのかご存知ですかぁ
まずもって、開戦二週間で少なくともイタリア全土とフランスの半分は完全にソ連軍の支配下に置かれるであろうと予測されてました。
 
これは、少なくとも、ですぜ。 場合によってはスターリン戦車が英仏海峡に到達するだろうと考えられてた、二週間以内にネ。
で、問題はそうなった場合にどうするのか、ってことですが・・・、エッ米軍の支援で巻き返しを・・・って 
それもそうですけど、そんな他力本願なことはメインには考えてませんでした。
 
フランスのことは知りませんが、イタリアでは占領下の抵抗運動と破壊活動を担うべき組織が当時の政府によって極秘裏に作られ、武器弾薬も各地の秘密基地に蓄えられてたんですよ。
もちろん極右勢力を中核とした組織ね。
 
《鉛の時代》と呼ばれた 70 年代、イタリア各地で起きた爆弾テロ事件の多くはこうした組織が関係し、時の警察の協力を得ていたことも明らかになってきています。
 
で、誤解してもらっては困るのは、のす爺ィがこれを見習うべきだ、なんて妄言を吐こうとしてるワケじゃないってことです。
んなもん、おっぱじめられた日にゃあ、トンデモナク悲惨なことになりますし、実際、そうならなくてもイタリアでは無差別テロ事件が起きてたわけでネ。
 
それに、困る困らない以前に、そもそも日本人にはムリ。
こういう意味で、日本人は戦争には向いてない。
 
近代化以後、戦前の日本はしょっちゅう戦争をして、結構勝っていたような印象があるかもしれませんが、あれらは皆、海外に派兵してやった戦争であり、国外での勝利だった。
こういう戦争は、ハナから勝ち目があると思うから攻めて行くわけでして、事前にそれなりの準備もしてますから一定の成功を収めるのはある意味当然です。
 
一方、「専守防衛」に関しては、そんな経験がまったく無いばかりか、試みさえしたことがない。
いや、元寇があったか・・・笑。)
で、だったら自衛隊には何ができるのかといえば、それは敵地攻撃能力による防衛しかありません。
のす爺ィは決して実際に外国を攻撃しようなどと妄言を吐いてるんじゃありませんぜ。
 
そうじゃなくって、《専守防衛》というのは飽くまでもスピリットであって、物理的には予算から何から、装備も訓練もすべては国外の敵に対する攻撃能力・・・(飽くまでも能力ね)の強化に向けられるべきじゃないのかってことです。
 
ちなみに「文民統制」なんてものが現実には機能しないってことは、それこそかつての日中戦争の開始から拡大に至る経緯を見れば明らかなんですが、
・・・っと、こんなおしゃべりだけでもうこんな分量になっちゃってる いや、どうもスミマセン
 
本題に戻ります。
いやね、ブログでカンツォーネのおしゃべりをしてるうちに段々とノスタルジーに駆られてきちゃいまして、パッティ・プラーヴォの 70 年代のレコードをまたまた注文しちゃいました。
 
お金、使い過ぎなんですが、ナイスボタンを下さるとも様は奥様に借金しながら CD を集めてらっしゃるというし、旅行マニアのひろ様も買わずに後悔するよりも買って後悔が正解だと言ってさんざん背中を押して下さるしで、どうにもガマンできなくなっちゃった・・・〔笑〕。
 
到着したらまたご報告しますけど、彼女の Philips 時代の 3 枚です。
どれも CD は既に持ってるんですがね・・・〔笑〕。
 
イメージ 1
 
これらは 1971-72 年に立て続けに出たアルバムでして、全部カバー曲だけでできてるんですが、それまでの
RCA 時代の彼女から一挙に大人っぽくなってまして、22 歳という実年齢が到底信じられないほどの色気を発散してた。
 
が、のす爺ィは当時もこれらのレコードは持ってませんでした。
確か、買おうとしたんですが、売り切れてて買えなかったように記憶してます。
友人・・・というか、この道の先輩に当たる人に貸してもらってカセットに録音したのを聴いてました。
 
どれもいわゆるコンセプト・アルバムでして、そのベースになってるコンセプトそのものからして素晴らしかった。
で、ここからだったんですよ、例の空っぽ論争に繋がっていくのす爺ィの誤解が始まったのは・・・。
 
つまり、こうしたコンセプトとパッティ・プラーヴォとを同一視しちゃった。
ホラ、よくあるでしょ、新人女優がある役で成功すると、それまでに出来てたその女優さんのイメージっていうものがまだ無いもんだから、どうしても役のイメージで以って見られちゃうって・・・。
 
スーパーマンとかターザンとかの俳優さんも同じですよね。
他の役への転身がなかなかうまく行かない。
 
ある意味、この Philips 3 枚がデキ過ぎてたとも言える。
ですけど、この後、再び RCA とヨリを戻した彼女がどうだったのかと言いますとね・・・
いや、今日は護衛艦の空母化の話題でしゃべり過ぎちゃったし、もうこんなとこにしときますわ・・・〔笑〕。
 
が、これだけでサヨナラってのもナンですし、既にご紹介したあの mai una signora ・・・RCA に戻って 2 枚目のアルバムになるんですが、あれの B 1 曲目のCome un pierrotを、これは Reference G のシェルに入った SPU Royal II で掛けときますね。
 
イメージ 2
 
高価なモデルですが文句なしにイイ音で鳴ってくれるのす爺ィお気に入りのカートリッジです。
Lundahl のトランスを介して LUXMAN E-1 MM 入力に繋いでます。
 

まぁ、軽い曲ですが、悪くはない。
パティ・プラーヴォもこれくらいの所で何とか踏み留まってくれたら良かったんですがねぇ~・・・。
 
 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_04

$
0
0
 
前回はちょっとした前置きのつもりではじめたおしゃべりがえらい脱線の始まりになっちゃいまして、本来のテーマについてはホンのちょっとしかやりませんでした。
・・・ので、今日は気を散らすことなく、のっけからその話をさせていただきたいと思います。
 
のす爺ィがパッティ・プラーヴォにひと目惚れしたのは、Philips 3 枚のうちの最後になります 1972 年に出たSì... incoerenza っていうコンセプト・アルバムを聴いてのことでした。
既に言いました通り、このレコードも当時から持ってなかった一枚なんで、とりあえずは CD の写真を載せときますね。

イメージ 1
 
オリジナル LP の見開きジャケットもこれと基本的に同じなんですが、表紙が完全に無文字でして、これがカッコ良かった。
上の写真の文字部分は、CD 以前、恐らくは70 年代かと思いますが、再発 LP が出た際に付け加わっていたものです。
 
のす爺ィが発注したのは、この再発盤になります。
なにせ中古盤なので、コンディションを重視した結果なんですが、本当を言えば無文字のオリジナル盤が欲しいところなんで、盤質の良好なものが見つかればいずれそれも買いたいと思ってます。
 
が、このレコードそのものにつきましては、いずれ届いた折にでも詳しくご紹介することにして、前回のおしゃべりの続きをやらせていただくことにしましょう。
 
要するに、若かったあの頃ののす爺ィが夢中になったのは、これら Philips 盤を満たしていた彼女の イメージ だったんだ、ってところからの続きになります。
 
こうしたイメージこそが問題なんだ、ってことに関しましては別にパッティ・プラーヴォに限った話じゃないわけで、比較の対象にしようとしてますオルネッラ・ヴァノーニについてもまったく同じことが言えます。
現実のヴァノーニの人柄や性格、それに周囲の人との関係などをあれこれ探ったところで得るモノなど何もないでしょう。
 
ただですね、のす爺ィが思うに、こういったイメージをどんなものにしたいのか、それを考えて創りあげていくに当たって、歌手自身がどの程度それに参画しているのかっていうのが、後々かなり重要なことになってくるんじゃないかと・・・。
 
もちろん、プロデューサーなりブレインなり、誰か別の人間がそうした仕事をするんだとしましても、それを具体化する・・・つまり、彼らの造ろうとしているイメージにうまく合致するような演奏をする能力というのも、これはこれで非常に重要な要素になります。
 
そもそも、そうしたイメージの形成に当たっては、これを具体化することになる歌い手の傾向や特質を押さえた上でやる必要があるでしょうし、その意味では、いずれにせよ両者の密接な協力と言いますか、共同作業と言いますか、まッ、そういったものが欠かせないだろうと思います。
 
以前、【映画】の書庫でやったアントニオーニの『情事』に関するおしゃべりで、音楽を担当したジョヴァンニ・フスコ に監督が依頼したイメージを取り上げた記憶があります。
 
あれなんか、そうしたイメージの創造と具体化が大成功した好例じゃないかと思いますし、実際、あの音楽は冒頭のタイトル部分だけでなく、映画の中でも実に効果的に使われていました。
例えば、終わり近くのこんなシーンで・・・
 
 
でね、話をパッティ・プラーヴォに戻しますと、Philips 時代のあの 3 枚のコンセプト・アルバムには確実に彼女のイメージを決定づけるようなコンセプトがあったんですよ。
それが特に顕著だったのが 3 枚目のSì... incoerenza でして、このアルバムのコンセプトを創ったのはレオ・フェレだったんじゃないかとのす爺ィは考えてます。
 
CD のどこを見ても彼の名前は見当たりませんが、もし彼でなかったとしたら、彼のシャンソンで以ってこのアルバムにおけるパッティ・プラーヴォのイメージを創り上げてやろうと思った人間がいて、その男が女だったかも知れませんが・・・やった仕事だと思います。
 
そして、パッティ・プラーヴォは実に見事にその要求に合った声、合った演奏でもって応じたと・・・。
結果はちょうどアントニオーニとジョヴァンニ・フスコ の協力同様、非常に成功したものとなった。
 
だけど、こんなおしゃべりをしてると、実際に音を聴いていただく必要が生じちゃいますよね。
残念ながらまだレコードが到着してないんで、やむなく CD 音源で聴いていただきますか・・・。
 
アルバムのイントロ(レオ・フェレの la solitude 1 曲目の 『マイ・ウェイ』ね。
そうそう、オーケストラはビル・コンティ・・・、あのヴァノーニの Dettagli でも素晴らしかったですよね、オーケストラが・・・。
 
 
アルバム・タイトルのSì... incoerenza なんですが、この曲のイタリア語歌詞に出てくる次の箇所
però, non ha importanza,
se c’è chi parla d’incoerenza,
perché io sono io a modo mio
・・・に由来します。
 
でも、歌詞の一節をそのまま取って来てはいないでしょ。
と言っといてから少し間があって、そいでもって... incoerenzaですよ。
クゥーッ、シビレるぅ~!! ・・・〔笑〕。
 
だからね、こういう何とも言えぬカッコ良さが、のす爺ィはパッティ・プラーヴォのカッコ良さだと思い込んじゃったワケですよ、初めてこのレコードに接した当時はね。
もちろん、明確な認識を持ってそう信じ込んだってことじゃなく、彼女のイメージがこれで以ってのす爺ィの頭ん中に出来上がっちゃった、っていう意味ですけど。
 
じゃ、今夜はこんなとこで失礼しますね。
 
だけど、なんか、こんなことばっかりしゃべってると、一体どこが空っぽなんだ?! っていう声が飛んで来そうですな。
が、まぁ、落ち着いて下さいや、そうスグにそれと分かるような空っぽさなんだったら、こんなに長々とやってないですよ・・・〔笑〕。
 
 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_05

$
0
0
 
昨日帰宅してみると注文してあったパッティ・プラーヴォのレコードが届いてました。
Sì... incoerenza の再発盤です。
 
盤、ジャケットともにコンディションは極めて良好で、ベルリンのショップからの購入でしたが送料も 7 ユーロと安く、そうした意味では充分に満足のいく物でした。
ただ、やっぱり再発盤だけではのす爺ィのノスタルジーの高揚(?)に歯止めを掛けることができず、ローマの別のショップにオリジナル盤を発注しちゃいました。
 
この店も送料が割安で 10 ユーロだったんでそれに釣られて・・・。
でも、こりゃあのす爺ィの経済は赤字もイイとこですわ。
しばらくは節約を強いられますが、とりあえずはもうこれ以上欲しいものはありませんし、別にイイでしょう。
 
ただ、元々のす爺ィは外食もせず、衣類や靴も安物ばっかりで生活してますんで、これ以上の節約と言ってもそうできることがない。
怖いのはクルマのトラブルですね。
予期せぬ出費を迫られることになるのはたいていこれですからね。
 
ちょっと前に 2 号車のミッションがオーバー・ドライブに入らなくなるというトラブルに見舞われましたが、幸い中古部品を使ってわずかな出費で修理してもらうことができた。
 
さてさて、その到着した再発盤を使って A 面のラストに入ってるレオ・フェレのavec le tempsを、今までお聴きいただいたことない Ortofon MC20 supreme っていうカートリッジで録音してみました。

イメージ 1

前と同じ T-1000 を介して LUXMAN E-1 MM 入力に入れてます。
 
希土類系のマグネットを持つこの辺のカートリッジはどれも出力が大き目なんで、SPU 用の昇圧比の高いトランスに繋ぐのはヤメた方がイイ。

イメージ 3
 
T-1000 は昇圧比が公称 26 dB なんで、E-1 MM 入力でミディアム50 KΩに設定しますと、入力インピーダンスは計算上ざっと 125 Ω になります。
内部インピーダンスが公称 6 Ω MC20 supreme にとってちょうどイイ感じ。
 
じゃ、聴いてやって下さ~い。
 
 
いかがでしたぁ
 
せっかくですので、これと並べてあの組んだばかりの可愛らしい AR ES-1 でも鳴らしてみました。
こちらはご存知 V15 type III を Infinity Black Widow に組み合わせたヤツね。
MC vs. MM 勝負の一環として比較をお楽しみくださ~い〔笑〕。

 

イメージ 2
 
やっぱ、オーディオ・カテゴリーでやってる以上、日曜なんだし、この程度のサービスは提供しないとマズいんではないのか、っていう危惧を抱いた結果です・・・〔笑〕。
 

こちらはいかがですゥ
 
まァ、こうしてダイレクトに比べますと、やっぱ年代も新しい MC に軍配が上がるかとは思いますけど、でも、のす爺ィ的にはポップスのレコードなら MM で充分・・・っていうか、充分以上にイイ音で鳴るという気がします。
クラシックを聴かないんだったら、少なくとも普段使いには高価な MC 型やら昇圧トランスやらを引っぱりだす必要はないんじゃないでしょうか。
 
もちろん、そういうのも持ってて時々こちらで聴いてみるってのは大いにアリだと思いますけど、普段レコードを楽しむのには、こういう Shure の古い MM 型の方がむしろ好ましいような気さえします。
しんのすけ様が Audio Technica Shure の骨董的モデルを高く評価なさるのも実にむべなるかな・・・ とのす爺ィも思うのであった。
 
で、機器についてはこんなとこにして、パッティ・プラーヴォの方ですけど、『マイ・ウェイにしろ、この曲にしろ、そもそもが若い女性の歌うような曲じゃないとは思われません
今、ちょいとウィキペディアを見たんですが、フランク・シナトラが 『マイ・ウェイを歌って大成功したのが 1969 年だったそうです。
 
ってことは、1915 年生れの彼は 54 歳だった。
まぁ、そういう年齢に相応しい曲ではありますよね。
それまでの人生を振り返って歌うワケですし、少なくとも不惑と言われる齢よりは上まで行ってないと変でしょう。
 
ところが、我がお姉さまパッティ・プラーヴォが Sì... incoerenza をお出しになられた 1972 年、その御歳はと言いますと、弱冠 24 才。
このアルバムって、『マイ・ウェイとこのavec le tempsだけじゃなく、他の曲もだいたい全部がこんな感じ・・・、つまり、二十台前半の女性には到底似つかわしくもないような歌ばっかり・・・。
 
このことからしても、理性的に考えりゃ、なんかオカシイとのす爺ィも気づくべきではあったんでしょうね。
実際のところ、もし仮にこの一枚だけが突出してたんだとしたら、気づいたんじゃないかと思います。
 
ですが、Philips 移籍後の1971 - 72 年に掛けて出された3 枚のアルバムは、どれもが外国曲のカバーを中心としたコンセプト・アルバムで、しかも順を追ってドンドン凝り方が普通じゃなくなって行った。
 
例えばのハナシ、Di vero in fondo と題された最初の一枚は、まだジャケットの下の方に小さくタイトルが印刷されてたんですが、次の Per aver visto un uomo piangere e soffrire Dio si trasformò in musica e poesia. からは完全に文字ナシになっちゃった。
 
しかも、それだけじゃなくって、この二枚目のアルバム・タイトル・・・何ですか、この長さは
フツーじゃないでしょ、どう考えたって。
で、このアルバムの中のメインの曲は A 3 曲目なんですが、これがまた長い。
 
このアルバムも注文してあるんですが、まだ届かないんで CD のをアップしますね・・・っと思ったんですが、一度にそう何曲も載せると聴くほうも気が散っちゃいますよね。
うん、今日はさっきアップしたavec le temps (col tempo) だけにしときましょう。
本当はあの曲についてあれこれおしゃべりするつもりだったんだし・・・。
 
だけど、それも次回に回させて下さいや。
ゴメンナサイ
どうせ残りの字数だけじゃ収まるわけないし、それに考えがまとまらなくなっちゃった・・・。
 
 
 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_06

$
0
0

前回はローマのショップに Sì... incoerenza のオリジナル盤を発注したって言ってたんですが、先方から標記が間違ってたっていう連絡がありまして、実際のコンディションはそれほど良くないから、トラブルの元になるとイケないしキャンセルしてくれないか、ってことでしたんで、あの話はナシになりました。
 
なんでも、店員の兄チャンにやらせてたんでコンディションの評価がおかしくなってたとかで、発送前に自分の目で確認したところ間違いが判明したんだそうです。
どうしても欲しいってことなら半額にするとも言ってましたけど、こちらは別に急ぐわけでもありませんし、ベルリンから買った再発盤は前に言いましたように非常に良好なコンディションですので、今回の注文はキャンセルしました。
 
まぁね、ちょっとお金使い過ぎでもあったんで、神様が戒めて下さったんでしょう。
 
・・・、なぁんて言ってたら、なんと別のショップに盤、ジャケットとも抜群のコンディションと思われるヤツがあるのを見つけちゃった。
いやぁ、神様、ゴメンナサーイ お送り下さったメッセージを取り違えちゃって・・・。
こっちを買え、っておっしゃってたんですね
 
・・・っというわけで、返金されたのに更に上乗せしてこのレコードを注文することになっちゃいました。
届くのが楽しみだなぁ~。
そうそう、先に買った再発盤は 1990 年に出てたみたい。
やっぱオリジナル盤が欲しいですよね、どうせなら・・・。
 
さてと、前回お聴きいただいた A 面ラストのAvec le temps (Col tempo) 、いかがでしたぁ?
のす爺ィは非常に気に入ってます。
 
この Sì... incoerenza っていうアルバムをのす爺ィはパッティ・プラーヴォのベストだと思ってまして、だからこそ大枚はたいてオリジナル盤を買い求めたりもしてるわけですが、それはコンセプトがイイってだけじゃなく、入ってる曲がほとんど全部素晴らしいからでもあります。
 
Avec le temps (Col tempo)も、そんなわけで非常にイイとは思うんですが、ただ、これは必ずしも彼女のせいとばかりは言えないものの、ひとつだけ気になる点があります。
それはイタリア語版の歌詞と関連するモンダイでして、何度も繰り返される冒頭のリフレインをオリジナルのフランス語と見比べて下さい。
 
Avec le temps,
avec le temps, va, tout s’en va...
Col tempo, sai,
col tempo tutto se ne va...
 
で、これね、意味はほとんど・・・っていうか、まったく同じなんですわ。
前回のコメント欄で koj 様とのやり取りがフランス語のオリジナル歌詞の方へ行っちゃってましたけど、パッティ・プラーヴォが歌ってるイタリア語版はほぼ完全にこれの翻訳といってイイ。
 
冒頭の印象深いこのリフレインもそうです。
ただね、イタリア語版にはオリジナルに無い言葉がひとつ入ってるのにお気づきになりましたぁ
 
そう、Col tempo sai, sai っていうひと言なんですよね、これはフランス語オリジナルには無い。
なぜこうゆうことになってるのかと言いますと、こうしないと歌えないからなんですわ。
 
オリジナル歌詞の音節を見ますと、最初の一行は 4 音節から成ってます。
A/vec / le / temps,
             
リズムは【弱っていうイアンビックですね。
だから、イタリア語式に言うとこれは 5 音節詩行ってことになります。
で、音楽はと言いますと、このリズムに合わせて作ってあるんですよね。
 
ですが、これをイタリア語にすると、意味的には・・・
Col / tem/po
       
・・・となって、3 音節でオシマイになっちゃいます。
5 音節から 3 音節に減っちゃうってのは、これはちょっと対応がムズカシイ・・・っていうより、無理ですわ、ハッキリ言って。
 
だから、訳詞を作った人はあのsaiっていうひと言を補ったんですね。
Col / tem/po, / sa/i
             
こうすれば原詞とまったく同じリズムを刻むことができますので、歌い方も同じで OK ってことになる。
うまく考えたものではあります。
 
それはそうなんですが、リズムはこれで整ったものの、意味の方がピッタリいっしょにはならない。
だって、saiってのは、確かに sapere っていう動詞の活用形ではあるんですが、ここではそんなに強い意味は持ってません。
無くってもゼーンゼン困らない言葉であって、原詞で同じ第 4 音節にあるtempsとは比較にもならない。
 
だから、音楽的には、このsaiっていう部分を強調するのが正しいんでしょうけど、本当にそれをやっちゃうとちょっとマズイことになるんですわ。
 
従って、このsaiはできるだけ抑えて歌う・・・あるいは、抑えて歌いたいというキモチが伝わるような歌い方をして欲しいところなんですが、パッティ・プラーヴォのsaiには全然そういう雰囲気がない。
 
そうは言いましても、とりわけこの Sì... incoerenza という傑作アルバムの中にあっては、これが特別に気になるというほどじゃありません。
それにまた、これは飽くまでも歌詞との関係において生じる問題ですので、イタリア語の分からない人が飽くまでも音楽として鑑賞している限りは、何らモンダイは感じないだろうと思います。
 
ただ、若かった頃ののす爺ィがやったみたいに、何度も何度も、繰り返し繰り返し彼女がこの歌を歌うのを聴いて、そのたびに毎回悶絶したりしてますと(笑)、段々と気になり始める。
 
歌ってのは、歌詞があって音楽があるから「歌」であるわけでね・・・。
この辺の一致が失われちゃいますと、どういうことになるか・・・例えば日本語で歌われるオペラって、どーしよーもなく間の抜けたものに聴こえるでしょ・・・〔笑〕。
 
こうして、例の空っぽ論争へと繋がって行くことになるわけですわ。
 
じゃ、今日もオーディオ・カテゴリーであることを念頭に、この曲をまた別のプレーヤーで掛けてみますか・・・。
お持ちの方も多いと思われる SPU Classic なんかはどぉでしょう

イメージ 1
 
しんのすけ様はのす爺ィがオリジナル SPU を持ってないことにちょっと驚いてらっしゃいましたけど、のす爺ィはあれにはさしてノスタルジーを感じないんですよ。
これについては以前どこかでお話ししたことがありましたんで繰り返しませんけど、とにかく全然欲しいとは思いません。
 
ということで、SPU Classic GE を、これまた復刻版的モデルである RMG-212i に取り付けて、TD 160 で鳴らしてみましょう。
トランスはJupiter Audio っていうショップが作ってた Parnassus っていう名前のモデルです。
中身が何なのかは知りません。
 
イメージ 2
 
見た目が立派で、しかも PASS やら二系統の入力やらがあって使い易そうだったんで、ちょうどお金のある時に中古を見つけて買いました。
昇圧比が 31 dB ありますんで、まァ、SPU 専用というべきでしょうね。
 
これを介してVanguard II MM 入力に入れてますんで、公称 2 Ω SPU Classic から見た入力インピーダンスは計算上 37 Ω 程度になります。
 
いつも同じ曲ばっかりで退屈なさるかもしれませんけど、まぁ、のす爺ィが上で言ったことにどの程度納得できるかお考えいただきながら SPU Classic の古典的な音をお楽しみくださいや。
 
 
じゃ、皆さん、お休みなさ~い。
 
 



O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_07

$
0
0
 
前回はパッティ・プラーヴォの歌うAvec le temps (Col tempo) に関してちょっとした不満を述べたことから、あるいはのす爺ィがあのアルバムを高く評価していないのでは・・・という誤解を与えてしまったかもしれません。
 
が、CD、再発 LP に加えて 1972 年のオリジナル盤まで買い求めていることからもお分かりの通り、あの Sì... incoerenza には当時から今に至るまで、も~メロメロであります。
 
じゃあ、一体なぜあのsaiというひと言に拘って不満めいたことを呟いたのかと言いますと、それは、70 年代後半以降の彼女に対する不満との関係からであって、あのsaiの歌い方そのものはさほど気になるほどのことでもありません。
 
あんな小さなことなど、アルバム全体から発せられる濃厚な魅力に比べたらまったく取るに足りません。
なので、今回も一曲お聴きいただくことにしましょうかね。
いや、一曲と言わず、A 面の3 - 4 曲目を続けて行ってみませう。
 
ボサノバの“発明者”とされるブラジルの詩人、ヴィニシウス・デ・モライスとシコ・ブアルキによるValsinha・・・
これがまた御歳 24 才の若い女性が歌うような曲じゃあない。
なにせ熟年というか、それを通り越しちゃって、もはや高齢者カップルの歌ですからね・・・〔笑〕。
 
もう一曲は、ですが、はるかにまとも・・・つまり、年齢相応の曲です。
Non so perché mi sto innamorandoっていうタイトルになってますが、元は英語の外国曲です。
 
プレーヤーは何にしましょうか・・・?
久しぶりにRCH のアームを引っぱり出しますか・・・。
カートリッジはオルトフォンの MC20 super が付けてありますんで、これから DENON AU-S1 っていうトランスを介して Vanguard II へ・・・。
 
イメージ 2
 
昇圧比は比較的低く、22.3 dB しかありませんので、0.2 mV MC20 super との相性がどんなものなのか、ちょっと気に掛かりますが、高過ぎるよりはマシですし、決して出力電圧が不足することはないでしょう。
 
いや、それにしてもPD 441 ってのは便利なターンテーブルですなァ・・・
トーンアームそのものは既にセッティング済みですので、ホイチョイと載せ替えるだけ。
オーバーハングだけを合わせてオシマイ。
 
イメージ 1
 
このValsinhaって曲は結構いろんな歌手が歌ってて、のす爺ィの好きなミア・マルティーニもそのひとりなんですが、この曲に関してばかりはパッティ・プラーヴォの方が圧倒的にイイ。
まったく勝負になりません。
 
 
うん、出力電圧は全然不足しませんね。
この AU-S1 っていうトランス、すごくイイ。 オススメです。
昇圧比が高過ぎないんで色んなカートリッジに合いますしネ。
 
さてさて、Valsinhaに続く二曲目ですが、ご存知でした、これ・・・
のす爺ィもあの当時は知らなかったんですが、シェールのThe way of loveっていう曲のカバーです。
 
シェールってのもかなり好きだった。
美人じゃアなかったけど、それなりに色気ありましたよね、あの人も・・・。
今でも歌ってるのかなぁ
 
この時期のパッティ・プラーヴォ、ちょっとだけ雰囲気に似たとこがあったかもしれません。
そのせいか、B 面にも、もう一曲 Sony & Cher の曲が入ってますんで、いずれこれも掛けますね。
 
ああ、イイなァ・・・、それにしても。
この Philips 時代のパッティ・プラーヴォは 70 年代のカンツォーネの中でも白眉でした。
いや、これってカンツォーネじゃあないのかも・・・。
 
が、とにかく、この曲もシェールのオリジナルよりも断然こっちの方がイイ。
こんなに魅力的だったパッティ・プラーヴォが、あの後、あんなことになってっちゃうなんて〔涙々〕・・・、のす爺ィにはまったく想像できませんでしたね。
 
エッどんな風になったんだ、って
う~ん、いや、それはのす爺ィには言わせずにおいてやって下さいや・・・、悲し過ぎるし。
 
じゃ、今日はこんなとこで失礼しま~す。

 
 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_08

$
0
0
 
なんか、しんのすけ様が MC カートリッジと昇圧トランスの組み合わせに関して問題提起をなさったことから、オーディオにお詳しい GAIN 様もこの件に関してコメントを下さいましたんで、日曜の今日はそっちの方にテーマを振ってみたいと思います。
 
実を申しますと、今日は ローマのショップに注文してあったパッティ・プラーヴォのレコードが 3 枚到着しましたんで、それをクリーニングして聴いてみたいという欲求もあるんですが・・・、

イメージ 1

それは後回しにして、MC カートリッジの同一モデルを様々に異なる昇圧比のトランスで聴き合わせてみることにしましょう。
 
実験に用いるカートリッジは、出力電圧とインピーダンスがこういう実験に相応しい値を示すものでなくちゃイケませんよね。
ちょうど最近お聴きいただいたオルトフォンの MC20 supreme ・・・
 
これ辺りがちょうど良いんでは、と思います。
HMC で実験的に採用したネオジム磁石を初めて履きこなしたオルトフォンの自信作だったんじゃないでしょうか。

イメージ 2
 
諸元は、出力電圧 0.5 mV、インピーダンス 6 Ω で、負荷インピーダンスの指定が 20 Ω 以上というものになります。
これに昇圧比の変えられる T-30 っていうトランスを繋いで、対応インピーダンスを切り替えてみませう。
 
イメージ 3
 
この機種は 3 - 6 - 12 - 24 - 48 Ω という 5 段階に調節できますが、全部をやってみるというのもナンですし、一段飛ばしにして、3 - 12 - 48 Ω とやってみますか。
ちなみに、切替スイッチを 5 段階に設定した場合それぞれの、計算上の昇圧比入力インピーダンスは下の表のようになります。
 
インピーダンスの切替
3 Ω
6 Ω
12 Ω
24 Ω
48 Ω
昇圧比
32 dB
29 dB
26 dB
23 dB
20 dB
入力インピーダンス
30 Ω
59 Ω
118 Ω
235 Ω
470 Ω

アンプの MM 入力のインピーダンスを 47 KΩとした場合の計算値ですが、実際にはカートリッジの公称インピーダンス 6 Ω というのは 1 KHz 時のものであって、周波数に応じて大幅に変化すると考えられますので、いずれにせよこういう切替スイッチというのはひとつの目安に過ぎません。
 
さて、しんのすけ様は、入力インピーダンスを下げると低音の締まりが良くなるはずだとおっしゃってるんですが、のす爺ィ的に考えますと、話はそういう塩梅には行かないような気がする。
 
まずもって、そういう繋ぎ方をすると、カートリッジのコイルに流れる電流が多くなりますよね。
そうするとトランスからの逆起電力の影響も強まって振動系がダンプされる度合いが増すものと予測されます。
低域の締まりが良くなるというのは、このことを表わしてるんではないかと考えられるんですが、こうしたダンピングの強化は低域と高域とではどちらでより強くなるのでしょうか
 
一概には言えないかもしれませんけど、同じ程度にダンピングが強化されれば、高域の方がその影響は顕著になるんじゃないでしょうか
 
テスト・レコードのサイン・カーブでもない限り、レコードの溝には低音と高音が同時に刻まれてる場合が少なくありませんから、結局は低域よりも先に高域の方が締まりが良くなるんではないのか・・・
さらに言いますと、本当に低域のダンピング強化の効果が得られるほどにまで逆起電力が高まる頃には、高域に関しては締まりに締まって、も~ 締め殺されちゃう んじゃないでしょうか
 
まァ、その結果として、聴感的に低域が強調されることにはなるかもしれません。
でも、締まりの良い低音になるのかどうかは何とも言えないような気がしますし、それより何より、高域に関してはダンピングの効き過ぎから、ほとんど音が出なくなっちゃうんじゃないのかと・・・。
 
また、それと同時に、トランスからの出力電圧は非常に高くなりますから、フォノ・アンプの受け入れ限界を超えちゃうんじゃないかという懸念も生じます。
が、これに関しましては、しんのすけ様がアンプの耐入力はかなりあるはずだから心配は要らないんじゃないかとおっしゃってますし、のす爺ィにはアンプのことは皆目分かりませんので、あるいはそうなのかもしれません。
 
だから、のす爺ィなりの結論を申しますと、入力インピーダンスが高い方は、必要な昇圧比が確保できて適当な音量で鳴るのであれば、特に問題は生じない一方、逆にこれが低過ぎますと、何かと再生に支障が出てくるんではないかという予測が成り立つ・・・、と、こういうことになります。
 
じゃ、実際に鳴らしてみることにしましょう。
どういう順番で聴いてみましょうかね
 
のす爺ィの予測としては良好な再生音の得られそうなハイ・インピーダンスの方から行きますか・・・。
切替スイッチの 48 Ω を選択して、計算上の昇圧比が20 dB、入力インピーダンスは470 Ωというケースですね。
 
曲はパッティ・プラーヴォの Sì... incoerenza B 3 曲目、Ioです。
オーケストラも活発で色んな楽器が鳴らされ、ダイナミック・レンジも高そうなんで、こういう実験には好適なのではないかと考えました。

 

いかがですゥ
別に問題はなさそうですよね。
それとも、抜けの良い音だけど、厚みが不足してる・・・ように感じられますゥ
 
じゃ、もう少し入力インピーダンスを下げて、切替スイッチを 12 Ω に設定し、昇圧比26 dB、入力インピーダンスは118 Ω というケースを試聴しましょう。
MC20 supreme の公称インピーダンスは 6 Ω ですから、これでも しんのすけ様 流に言うと(?)入力インピーダンスは結構高めということになりそう。
 
 
どうでしたぁ
あ、そうそう、音量はだいたい同じになるように調節しました。
だって、昇圧比が上がった分、放っておいたら音量も上がりますからね。
 
さて、最後に、低音の締まりが良くなるハズの低インピーダンス入力を試しましょう。
切替スイッチは 3 Ω を選択しますが、これでも計算上は入力インピーダンスが30 Ω程度にはなりますので、MC20 supreme の取説が求めてる20 Ω以上という条件は満たされるはずです。
 
 
ガーン!!!ですな・・・、しんちゃんのウソつき
メカニズムはよく分かりませんが、マトモに鳴ってくれないことだけは確実です。
 
冒頭から歪っぽい音になってますが、レベルの高い所に来るとトラッキングそのものが明らかにおかしくなっちゃってる。
 
のす爺ィ的には、この原因はやっぱりダンピングの効き過ぎのせいで機械的コンプライアンスが押し下げられてしまい、その結果、針圧不足に陥っているのではないかという気がします。
正直、ここまでヒドイ結果になるとは、のす爺ィもまったく予想してませんでした。
これじゃ、大事なレコードが傷んじゃうヨ
 
ねっ、なぜこういうことになっちゃうのか、原因については識者の分析を待ちたいと思いますが、トランスの入力インピーダンスは高い方がイイってことだけは確認できました。
 
でね、昇圧比の高いトランスですけど、あれはやっぱりオリジナル SPU に代表される低インピーダンス・低出力のカートリッジ向けですわ。
カートリッジの出力が低いもんだから、トランスはやむを得ず高昇圧比・低入力インピーダンスという設計になっちゃってるわけでしょう。
 
それでも特に問題が起きないのは、もともと機械的コンプライアンスの低い重針圧設計なんで、だから少々ダンピング過多になったところでトラッキング能力には影響が及ばないと、こういうことじゃないかと思いますね。
 
フーッ、レコードの音溝が傷んでないか、もう一度 V15 tpye III で確かめてみなくっちゃ・・・。
もっとど~でもイイようなレコードでやってみるべきでした・・・
 
 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_09

$
0
0
 
さてさて、前回写真をお見せした 3 枚のレコード・・・ローマのショップから買ったヤツですが、あのうちの 2 枚が Sì... incoerenza に先立つ Philips 盤でして、この 3 枚がイタリアで trilogia って呼ばれてる・・・、
 
イメージ 2
 
今回買った残りの一枚 Incontro っていうのは彼女が RCA に復帰してからの物になります。
つまり、RCA 復帰の一枚目が以前ご紹介した Pazza Idea で、二枚目が mai una signora、そして、それに続く三枚目がこの Incontro ですね
 
イメージ 3
 
で、このアルバムが彼女の良かった時代の最後を飾ることになる・・・。
続く4 枚目の tanto ってのは明らかにもう下降線を描き始めてました。
 
のす爺ィはこれも持ってはいますが、そして、その次のアルバムもあの当時買うことは買いましたんで、どっかにあるはずですが、いずれもほとんど聴くことはありませんでした。
それくらいヒドイ劣化だった。
 
koj 様がYouTube か何かで恐らくはもっと後の彼女が踊ったり歌ったりしている動画を観たとかおっしゃってましたが、まぁ、できることならそんなもの探さずにいていただけたらと思います。
歌だけでなく、色んな意味で、昔ファンだったということさえ恥ずかしくなるような醜態ですので・・・。
 
のす爺ィが彼女のことを空っぽだなどと言って暴言を吐いてたのは、こういう複雑な胸の内ゆえのことです。
単純な侮蔑や軽蔑じゃありません。
単に評価しない歌手ならばいつの時代にも掃いて捨てるほどいますし、だから、そんな連中について一々論評したりもしません。
 
他ならぬ“あの”パッティ・プラーヴォだからこそ、敢えて空っぽだなどと言わずにいられないんですよ。
一体、何がどうなってこういう激しい劣化が起きたのか・・・、ハッキリ言えるのは、あの Philips 3 枚とそれに続く 3 枚の RCA のアルバムにあった彼女のイメージを創っていたのが彼女自身じゃあなかった、ってことです。
 
前にも言ったことですが、こうしたイメージ虚像であったとして、(いや、虚像に決まってるんですが・・・)、そのことはまったく問題じゃアない。
それどころか、現実とは無関係に、よりエ□ティックでより魅力的な女性像を創り上げてたんなら、そんな結構なことはありません。
 
ただ、そうしたイメージの創造が他の誰か、何か他の組織によって、彼女を埒外に置きながら行なわれてたんだとしたら・・・、いや、それでもなお、別に構わないんですよ、そうした創造活動が維持されてさえいたならね。
 
ですが、70 年代後半以後のパッティ・プラーヴォを見るに、それはまったく維持されなかった・・・。
もし、あの頃の彼女のイメージの創造に彼女自身が加わっていたのだとしたら、これほどまでに跡形もなくそれが消え去ってしまうというのは考え難いことなんですわ。
 
つまり、ちょっと信じ難いことではあるんですが、“あの頃”の彼女は完全な繰り人形だった、ってことです。
それはそれはよくできた繰り人形ではありました。
ホンモノの人間・・・現実の魅力的な女性そのもののように見えた・・・。
 
でも、実際にはそうじゃなかったんですよ。
これがのす爺ィの空っぽという表現の意味です。
 
ですが、そのことがハッキリした以上、夢は夢だと知りつつ、夢を見るためにレコードに針を落とすほかありません。
じゃ、昨日届いた Philips の二枚目、あの長~いタイトルのアルバムから、A 4 曲目のこれまた長い曲を聴きましょうや。
 
今日はLINN ASAK っていうカートリッジを鳴らしてみますね。
これは 73 年に出た LINN ブランドで最初のカートリッジだったんですが、例の某サイトによりますと、日本のスペックスOEM で、モデル名は朝倉氏に由来するそうです。
 
前にもどこかで言ったような記憶があるんですが、確かに真っ黒の烏天狗みたいな姿にもどこかスペックスに通じるものが感じられます。
 
ともあれ、ASAK の諸元を並べておきますと、出力 0.25 mV、内部インピーダンス 3.5 Ω で負荷インピーダンスは 30-500 Ω が指定となってますね。
500 Ω ってことは、DL-103 に代表されるハイ・インピーダンス型用のトランスまでをカバーしてますんで、要するに何でも OK ってことです。

なお、針先は通常の楕円、コンプライアンスは 12×10-6 cm/dyne で、針圧が 1.8 - 2.2 g と・・・。
何と言いましょうか、突出したところの無い、非常に穏やかなデータですよね。
で、音質もまさにそーゆー感じで、背伸びとか無理とかを一切感じさせない大人しいものです。
尖ったところが一切ない。
 
いつか、しんのすけ様が LINN の音質は一般に素直だっておっしゃってましたが、このカートリッジもいかにもそんな感じです。
 
ですが、外観のデザインは素晴らしい。
これはいかにも LINN ならではでして、のす爺ィがこれを買ったのももっぱらこのデザインゆえです。
接続ピンが 4 横一列に並んでるのもカッコいい。
 
イメージ 1
 
ただね、これって結構使いづらいところのあるカートリッジです。
それは電気的な特性とかじゃなく、もっぱらこのデザインに関わる外形の問題でして、接続ピンのこうした配列はボディが上下に非常に薄いこと・・・つまり、天地が浅いことと関係してるんですよ。
 
ですので、ユニバーサル・シェルに普通に取り付けると、シェルの根元部分がレコードに接地しちゃうんですよ。
のす爺ィもやむなく小さなアクリル板を挟んで取り付けてます。
こういう風に天地の浅いボディを持つカートリッジとしては DL-103 Audio Technica AT33 シリーズを挙げることができますが、ASAK はあれらよりもさらに一段と浅い。
 
イメージ 5

もちろん、ユニバーサル・シェルじゃなく、例えば LINN のアームに取り付けるんなら問題は起きません。
ですが、今回は普通のシェルに付けて SME 3010R と組み合わせました。
問題のトランスですが、前回の実験で入力インピーダンスは高い方がイイってことが判明しましたんで、0.25
mV っていう出力電圧を考慮しまして、24 dB の昇圧比を持つ AT-2000T に繋いでます。

イメージ 4
 
フォノ・アンプは Amphion です。
MM 入力のゲインは 40 dB で、前回の実験に使った Vanguard II 42 dB よりもわずかに低めですが、まァ、大差は無い。
 
じゃ、聴いてみましょうや。
演奏時間が9 分近くになる長い曲ですが、タイトルもまた長い。
Storia di una donna che ha amato due volte un uomo che non sapeva amare だそうです。
 
 
が、これも外国曲のカバーです。
オリジナルはThe same old chairっていう曲みたいですが、のす爺ィはこのパッティ・プラーヴォの歌以外で聴いたことはありません。
作ったのは Shel Shapiro っていう英国人ですが、この姓からするとユダヤ人ですね。
 
じゃ、皆さん、お休みなさ~い。
 
 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_10

$
0
0
 
のす爺ィブログは一つの話題で十回やったら、話が途中でも一旦そこで終了して別の話題に変えることにしてます。
まぁね、別に正確に十回ポッキリで終わる必然性もないわけで、少々長引いたからって神経質になることもないんですが、経験上、やっぱ十回くらいを目処にテーマは変えた方がイイ。
 
で、これまでほとんどパッティ・プラーヴォのおしゃべりに終始してまして、タイトルに謳ってたヴァノーニについては何も言ってこなかったんで、最後の最後くらいには彼女にも登場願って・・・と思ってます。
が、今日はまだパッティ・プラーヴォで続けることになりそう・・・〔笑〕。
 
ところで、アナログ・オーディオ関係の方ですが、別の事柄が気になってインターネットを検索してたら、偶然、しんのすけ様がおっしゃってたMC 用トランスの入力インピーダンスと低音の締まり具合に関して、とあるショップの店長という人が書いてる古い記事に行き当たりました。
 
ですが、率直なところ、のす爺ィは全然説得力を感じない内容です。
でも、相手はプロですから、生半可な知識で直接反論する気にもなれませんし、だからと言ってブログで批判したりすると商売の邪魔をする結果になりかねません。
 
そうは言っても、やっぱり自分なりのおしゃべりもしたいんで、そのサイトのご案内をするのは避けつつ、のす爺ィの考えたことを申し述べたいと思います。
その人が言ってるのはざっとこんなことでした。
 
正確に言いますと、その人はトランスじゃなくヘッドアンプのことを問題にしてらっしゃるんで、あるいは事情が異なるのかもしれませんが、MC カートリッジと負荷インピーダンスの関係について書かれている事柄に関しては、のす爺ィの実験と重なるだろうと思う次第です。
 
ですので、その部分だけをかいつまんでブルーのフォントでご紹介しますね。
一般的には、低域がボケるのは高域が十分に伸びていない時である。 負荷抵抗が小さいと高域は伸びない。こう考えるのが普通です。うん、まさにのす爺ィが考えたのがこれですよね。
 
これが違うんですね。MC カートリッジの低域のボケは負荷抵抗が大き過ぎる時に起きやすいのです。ふむふむ、こちらはしんのすけ様のおっしゃってたことです。
 
原因は振動系の磁気制動。 負荷抵抗が大き過ぎると磁気制動が弱まり、振動系が動き過ぎ、低域がボケるのです。 抵抗値を下げますと、ショートに近い状態になって磁気制動が強くなり、振動系の動き過ぎを制御するのです。 (ふむ、ここの理屈に関しましては基本的にのす爺ィが言ってたのと同じなんですがね・・・。
 
ということで、まずはこの店長氏の主張はお分かりいただけましたぁ
理論そのものに関して言いますと、のす爺ィが考えたことはこの店主氏のおっしゃってることと完全に同一です。
 
それにも拘らず、結論が真逆というか、まったく異なる結果になるのは、赤字にした振動系の動き過ぎという記述があるからです。
 
MC カートリッジって、そんな風に・・・つまり、ある程度の電流をコイルに流すことで磁気制動を掛けてやってこそ初めてマトモに動くように・・・設計されてるんでしょうか
 
カートリッジを設計・開発する技術者にでも尋ねてみないと本当のところは分からないとも言えますけど、のす爺ィ的にはこれはまたずい分と突飛な説であるように思われます。
 
もし、そうであるならば、取説なんかに一番適切な負荷インピーダンスの値が書いてありそうなもんですよね。
んな、×Ω以上だとか、前回お聴きいただいた LINN ASAK みたいに30-500 Ωなんて、あっても無くてもさして変わんないような大雑把な範囲指定じゃなく、もっとキチンとね・・・。
 
例えば、これはMM 型ですけど、Shure V15 シリーズなんかはトーンアームからフォノ・アンプまでの静電容量についてかなり神経質な指定をしてますし、これを意識したと思われる同時代の SME のアーム・ケーブルには確かコンデンサーが仕込んでありました。
 
ある意味、かつての Shure なんかよりももっとコアなオーディオ・マニアが愛用しそうな最近の MC カートリッジに、これと似たような負荷インピーダンスの指定が無いというのも奇妙なことですし、場合によっては負荷インピーダンスを何段階かに変化させた時の周波数特性のグラフくらい付けといてくれてもバチは当たらんでしょう。
 
それにね、そもそも、んな負荷インピーダンスによって変化する電磁制動を頼りにしながら振動系の物理的な設計をするって、大変なんじゃないでしょうかっていうか、そんなこと可能なんでしょうか
仮に可能だったとして、そんな製品を世に送り出したんでは、ユーザーの使用条件によって性能がガラガラと変わっちゃうわけですよね。
 
常識的に考えて、ヘンですよ、いくら何でも・・・。
それに、電磁制動なんて要素を考慮に入れる必要のない MM 型や IM 型の振動系だって、マニア向けの高性能機の場合は恐らく設計・開発が結構ムズカシイんじゃないかと思います。
 
以前おしゃべりしたように Shure の高性能機を設計した Les Watts 氏なんかも、カンチレバーやダンパーの材質や構造について相当な研究の蓄積が必要であるようなことをおっしゃってました。
 
つまるところ、何が言いたいのかと申しますと、電磁制動を掛けないと振動系が動き過ぎなどというハナシは、のす爺ィには到底信じることができません
だって、じゃあ MM 型の場合はど~なっちゃうんですゥ
 
そりゃあ、ウデに覚えの愛好家が自作したような MC カートリッジなら、そういうケースも考えられなくはない。
でも、それはデキの悪いカートリッジから何とかマトモな音を引き出そうとするような場合のハナシであって、ちゃんとしたエンジニアが設計して一流メーカーが商品化してるような製品で、それは無いでしょう
 
いやね、一部のオーディオ・マニアの方々の中には「使いこなし」とか言いながら、設計者の意図とは異なる使い方をなさる方がおられることは想像に難くありません。
ですが、のす爺ィ的には、それはやはり一種の邪道というべきであって、少なくとものす爺ィはクルマであれオーディオ製品であれ設計者の意図通りの使い方を心掛けるのが好きです。
 
・・・ので、今までの Ortofon T-30 に替えて Audio-Craft TS-20 っていうトランスを繋ぎました。

イメージ 2
 
これまで T-30 を使ってたのはインピーダンスが 5 段階にも変えられるっていうことから、その便利さを求めてのことだったんですが、あの実験によって、昇圧比は 20 dB あればたいていのカートリッジには充分だってことが分かりましたんでね。
 
TS-20 は昇圧比が 20 dB なんですよ。
このトランスは、あのマイソニック・ラボの松平吉男氏がオーディオ・クラフトにおられた時に設計なさったものだと聞いてまして、なるほどねぇ、とのす爺ィは今さらながら納得した次第。
 
つまり、松平氏は昇圧比の高いトランスで出力電圧を稼ごうとするんじゃなく、カートリッジそのものの出力を上げるという正攻法を恐らく当時から追及しておられたのではないかと・・・。
 
あと、実際にレコードを聴くに当たりましては、フォノ・アンプのゲインもかなり関係しますよね。
今、このトランスを繋いでるのは Trigon Vanguard II でして、このアンプの MM 入力には 42 dB のゲインがあります。
 
これはかなり高い値でして、例えば LUXMAN E-1 のそれは 36 dB です。
対数表示なんで分かりにくいですが、これって要するにほぼ Vanguard II の半分ってことですよね。
色んな意味で、Vanguard II に繋ぐなら 20 dB の昇圧比でもむしろ高過ぎるほどになります。
 
例えば、前に実験で使ったネオジム磁石の MC20 supreme ですと 0.5 mV の出力がありますんで、若干ですが出力過大になるんですわ。

イメージ 1 
・・・というわけで、今日はあまり出力電圧の高くない、オルトフォンの MC20 super II で、パッティ・プラーヴォの良かった時代最後のアルバム、Incontro を聴いてみましょう。
A 1 曲目のタイトル曲incontroです。
 
だけど、これは歌っていうよりも彼女の囁きがメインですね。
例によってエ□エ□な内容でして、若かりし日ののす爺ィは聴くたびに胸がキューンと締め付けられてた・・・〔笑〕。


どうでしたぁ
エッ エ□エ□の囁きっていうけど、一体何を言ってるんだ、って
 
う~ん、それをご紹介しちゃうとYahoo! ブログのリストに載せてもらえなくなっちゃうんで、勘弁して下さいや。
じゃ、皆さん、お休みなさ~い。
 
 
 

 

O. ヴァノーニと P. プラーヴォ_11

$
0
0
 
さてさて、タイトルに謳った以上、ヴァノーニのこともおしゃべりしなくちゃイケませんよね。
実を言いますと、ヴァノーニの新しいレコードも買っちゃったんですよ。
Argilla っていう二枚組のアルバムで、500 セットの限定らしい・・・。
 
イメージ 3
 
ただ、アルバム自体は1997 年に出てますんで、当初は CD だったんでしょうね。
LP だと一枚に入りきらないんで二枚組になったんだと思います。
 
こういう風に LP 二枚組でアルバムを出すやり方はミーナがやってました。
だけど、のす爺ィはミーナが好きになったことは一度もなくって、だからたくさん出てるレコードもほとんど持ってません。
 
が、ともあれ、この Argilla はまだよく聴いてないんで、これについて何かおしゃべりするのはムリ。
でね、ちょっと驚いたのは、盤が透明なんですよ。
 
イメージ 1
 
のす爺ィが時代遅れで知らなかっただけで、ひょっとしてこれが今風なんですかね?・・・
おかげで写真がすごく撮りやすい〔笑〕。
盤面からの反射もあるんで、カートリッジにも光がよく回ってくれてキレイに写ります。

イメージ 2
 
おしゃべりはムリでも、とりあえずタイトル曲のargillaってのを録音しましたんで聴いてみて下さい。
ちなみにargilla ってのは粘土のことね。
だけど、ホンモノの粘土。

幼稚園や小学校で使った油粘土じゃなくね。

あっちの油粘土はイタリア語でどういうのかなぁ~?

 
ともあれ、装置は前回から引っぱり出してきた Audio-Craft の昇圧トランス TS-20 Ortofon の MC20
super II の組み合わせです。
 
このカートリッジは黒とゴールドの色彩がとっても美しいんですが、SME のシェルに付けるとゴールドのベース部分が全部隠れちゃって、LINN ASAK みたいに真っ黒にしか見えない。
のす爺ィはこれが残念で、平べったいシェルに付けたりもしてたんですが、アームが 3009R なんで今回はこういうことになりました。
それに、この純正 R シェルは音もすこぶるイイような気がするし・・・。
 
ともあれ、ご一緒に聴きましょうや、argilla・・・。
 
 
う~ん、どうですかね、ご感想は・・・
前衛的というか、何と言うか、これをカンツォーネと呼んでいいのかどうかよ~ワカラン。

でも、全然悪くないですね。
何度も繰り返し聴きたくなります。
 
1997 年のアルバムってことは、これを歌った時の彼女の年齢は今ののす爺ィと似たり寄ったりだったわけです
が、これを聴いてても痛感させられるのは、やっぱパッティ・プラーヴォとはハナから格が違ってたなぁ~ってことです。
 
そりゃあね、23 24 『マイ・ウェイ』やレオ・フェレをあんな風に歌えるわけないよな。
でも、それを彼女は歌っちゃってたんですからね、そこには何か秘密が・・・普通じゃない何かがあったと考えるべきだったんだな。
 
あの頃はパッティ・プラーヴォにもヴァノーニと変わらないくらいの色気を・・・、いや、ヘタをすると、もっと濃厚な色気を感じてたんですが・・・。
まァ、イイ・・・、彼女はああゆうことになってちゃったけど、一方のヴァノーニはその後も正常進化を続けて、80 年代には UOMINI Ricetta di donna を出し、90 年代になるとこんな歌を歌ってたと・・・。
 
いや、なんか今夜はいつも以上に支離滅裂になっちゃってまして、どうもスミマセン。
ちょっと疲れてるのかも・・・。
このままこのレコードを聴きながら安楽椅子でちょっと寝ます。
オートストップの付いてるTD 320 だから眠り込んでも大丈夫だし・・・。
 
 
 

MC 用 昇圧トランス あれこれ_01

$
0
0
 
先日、この頁で実験したところ・・・
MC カートリッジと昇圧トランス、それにフォノ・アンプという三者の間の関係には結構気を使った方がイイのだということが判明しました。
 
オーディオ・マニアの方々からしたら、何を今さらってことなんでしょうが、(・・・いや、だけどあのショップ店長の記事もあったくらいだし、必ずしもそうでもないか・・・)、が、まァとにかく、のす爺ィは改めて他のプレーヤーもチェックしてみることにしました。
 
なにせプレーヤー・フェチですので、即レコードが掛けられる状態にしてあるプレーヤーだけで手許に 10
慌てることなく落ち着いて一台一台チェックしていくことにしましょう。
どうせブログで格好のおしゃべりテーマにしながらやって行けばイイんで、急ぐ必要はまったくナシ・・・〔笑〕。
 
ただ、10 台と言ったところで、SME 3009 S2 imp. だとか、Infinity Black Widow といった、どうせ MM IM 型しか取り付けることのないアームと組み合わせてあるプレーヤーは問題外ですので、対象となるのは現在のところ 8 台だけ。
 
う~ん、「・・・だけっていう日本語表現が相応しいのかどうかはさておくとしまして〔笑〕、既にこの問題が持ち上がった頃に組み合わせを考えたヤツは改めて検討する必要もないワケでして、それ以外のヤツで一番気になっているのは、アルニコ系 SPU 専用としてます TD 160 + RMG-212i というプレーヤーです。
 
こいつにはちょっと前にご紹介した通り・・・、
素性は分からないものの凄く立派な姿をした昇圧比 31 dB のトランスが繋いであり、当然ながら SPU との関係にはまったく問題がないんですが、これがゲインの高い Vanguard II に接続してあるのが若干面白くない。
 
本当は LUXMAN E-1 に入れたいところなんですが、残念なことにスペースの都合がつかない・・・。
あまりに立派で堂々とした体躯ゆえでして、悩ましいところではあります。

イメージ 2
 
 まぁ、そのLUXMAN E-1 には、AT 1503 IV を載せた TD 126 MkIII が繋いでありまして、両者の間には以前ご紹介したように Ortofon T 1000 が入っています。
 
イメージ 3
 
これの昇圧比が 26 dB という中間的な値ですので、色んな意味で汎用性があり、何でしたら SPU をこのプレーヤーに付けて聴いたって全然支障は無いんですが、ただ、今モンダイにしているのはそーゆーことじゃあない。
 
別にSPU の音を満喫したいということではなく、あのTD 160 + RMG-212iっていうプレーヤーに SPU を付けて存分に鳴らしたいわけでね・・・。
 
イメージ 4
 
既に申しましたように物理的なスペースの関係で、フォノ・アンプは Vanguard II にならざるを得ませんので、昇圧比の低いトランスを・・・ということになります。
あれこれの組み合わせを検討した結果、のす爺ィはこういう組み合わせにしてみました。
 
イメージ 1
 
そう、DENON AU-S1 です。
エッそいつはDENON のハイ・インピーダンス用だろ、ミス・マッチもイイとこじゃんって
 
ふっふっふ、そんなことくらいはのす爺ィだって承知してますよ。
そもそもこういう問題がテーマになってきたのは、しんのすけ様からMC20 super は低インピーダンス型だから
このトランスはイマイチ合わないのではっていうコメントが入ったのが発端だったワケでしてね。
 
MC20 super は確かに低インピーダンス型ではありますが、公称 3 Ω となってますんで一応 AU-S1 の守備範囲 3-40 Ω の中に収まりますけど、SPU 2 Ω ですからね、ハズれちゃってます。
ですが、のす爺ィはこの件を敢然と無視。
 
エッ設計者の意図どおりに使うのがお前の主義だったんじゃないのか、って
そうですよ。
その通りですが、まずもって、SPU の内部インピーダンス値に関しましては、ひとつ以前から気になってた問題があります。
 
それは、Classic の初代機まで公称 2 Ω と発表されてたこの値が、Mk II になった時、6 Ω と発表されてたんですよね。
 
イメージ 5
 
ちなみに現在のオルトフォンの公式サイトでは、初代機と同じ 2 Ω に戻されてます。
でも、これって単なるミス・プリントだったんでしょうか
 
この問題に関しては、かつて海老沢徹先生もはて、表示方法の違いなのだろうかっと疑問を呈しておられました。
まぁ、上の証拠写真(?)のように当初6 Ω と発表されてたMk II のインピーダンスが今は2 Ω になってるんですから、何かのミスあるいは混乱があったことはまず間違いないでしょう。
 
ですが、この一件につきましては、のす爺ィ、最近、ハタッと思い当たるところがありました。
それは、これまたしんのすけ様がご自身のブログで取り上げてらっしゃったオリジナル SPU の出力電圧の値に関する問題です。
 
あの時までのす爺ィも知らなかったんですが、オルトフォン社は MC20 以前・・・つまり、SL15 の時代まで、ってことですが・・・、自社のカートリッジの出力電圧を 1 cm / sec. で測定して表示してたらしいんですね。
今は、すべてのメーカーかどうかは知りませんが、普通は 5 cm / sec. での値を公称値としてます。
 
ご存知の通り、SPU は例外的な長寿命を誇るカートリッジでして、こうした測定基準の変遷を乗り越えて生産が続けられています。
ですから、性能そのものは変化していなくても、スペックの表示方法が変化して、そのための混乱が生じていたのではないかと考えられるわけです。
 
で、出力電圧がこうであってみれば、内部インピーダンスについても同じことなんではないかと・・・。
つまり、オリジナルSPU の時代にあっては、内部インピーダンス値もまた1 cm / sec. 時の数値を公称値としてて、それが MC20 の頃から5 cm / sec. での値に変わったんじゃないかということです。
 
SPU Classic Mk II になった際の混乱は、このような事情に起因する可能性が高いとのす爺ィは思ってます。
要するに、最近の表示方法に従うと SPU の内部インピーダンスは2 Ω ではなく 6 Ω である可能性が高い。
 
じゃあ、一体なぜ現在の公式サイトでは2 Ω とされてるのでしょうか
これはのす爺ィにも分かりません。
 
オルトフォン社に尋ねてみる・・・ いや、のす爺ィはそういう気にはなれません。
以前、まったく別の件でオルトフォン・ジャパンが社内の技術者の方の内線番号か何かを教えて下さったことがあったんですが、それもどっかへ行っちゃいました。
 
ですが、理由はそれだけでなく、いずれにせよオルトフォン社の発表した値が混乱していることは間違いないと思われますんで、そういう問題に関してあれこれ言いに行きたいという気がしない。
のす爺ィは、他人様が触れられたくないと思っている話題には触れない主義なのです・・・〔笑〕。
 
ということで、ハナシはまだ続きますが、結構しゃべり散らしましたんで、第一回目の今日はこんなとこで失礼しますね。
じゃ、今日は聴いていただける録音もありませんし、皆さん、お休みなさ~い。
 
あ、そうそう、のす爺ィが SPU DENON AU-S1 を繋いだのは、このカートリッジの実際のインピーダンスを
6 Ω と判断したから、ってェわけじゃありません、次回のおしゃべりの先取りになっちゃいますけど・・・。
 
 

MC 用 昇圧トランス あれこれ_02

$
0
0
 
シリアで武装勢力に拘束されてたジャーナリストの身代金ですけど、あれ、恐らくは日本政府が全額出してますね。
国民からの批判と、米国をはじめとする国外からの非難を避けるために、カタール政府に頼み込んで、そこが出してくれたという形にさせてもらったんでしょう。
 
あと、映像でご本人が日本人じゃないという意味のことを言ったそうですが、彼の名乗った国籍の国の政府が何らのコメントを出さないところを見ると、あるいは真実だったのかなぁ~という気がしなくもない。

だって、国際的に注目を浴びるこうしたケースで、仮にどこかの外国人が日本人を名乗ったとしたら、日本じゃやっぱ話題にもなるだろうから、政府も何らかのコメントを出すよう迫られるんじゃないでしょうか。
 
 
さぁ~てと、おしゃべり開始でーす。
これまで何かとMC 用の昇圧トランスを色々買い集めてきたのは正解でした。
いや、別に集めようとして買ってたワケじゃないんですが、なにせ腐るものじゃないし、普通に使ってる限り劣化もあまりなさそうなんで、中古品でもさほど気に掛けることなく買えるようなところがあるんですよね。
 
なんでも、コアの材質によっては強い衝撃を与えると性能が劣化する場合があると聞いてますが、これについては落下を思わせる大きなキズがないか・・・くらいしか見ることができないんで、まッ、あまり気にしないことにしてます・・・〔笑〕。
 
ともあれ、こういう計画であれこれ買ってたワケじゃなく、いつの間にか増えちゃってただけなんですが、でも、あれこれ繋ぎ換えて楽しめるだけでも買い込んだのを後悔することはありません。
 
さてさて、前回の続きですが、公称インピーダンスが 2 Ω SPU Classic GE 3-40 Ω 対応の DENON
AU-S1 に繋いだらどうなるのか・・・。
のす爺ィが敢えてこういうことをしたのは、結果として得られる出力電圧が、フォノ・アンプ Vanguard II のゲインに照らしてちょうどイイからです。
 
イメージ 2
 
あ、そうそう、AU-S1 の昇圧比は 22.3 dB でして、入力インピーダンス 47 KΩ Vanguard II に繋いだ場合、カートリッジ側から見た入力インピーダンスは計算上 278 Ω になります。
 
今、SPU の内部インピーダンスを 2 Ωとしますと 139 倍ということになりますが、仮にこれを 6 Ωだとした場合は 46.3 倍です。
この後者の倍率って、一般に言われるところのちょうど良い数値なんじゃないでしょうかね・・・
 
で、この一般に言われるところの・・・っていう値の根拠なんですが、これについての議論はちょっと後回しにして、まずは内部インピーダンスが公称 2 Ω というSPU Classic GE AU-S1 と組み合わせた時の音を聴いてみて下さいや。
 
レコードは先日到着したパッティ・プラーヴォの Philips 盤二枚目、あの長いタイトルのアルバムに入ってる長い題名の、長い曲・・・Storia di una donna che ...ってヤツね。
まぁ、今日は日曜だし、それにオーケストラに色んな楽器が入っててダイナミック・レンジが広くって、しかも、この曲、この演奏、のす爺ィ的には彼女のベストなんで・・・。
 
 
どうです
悪くないでしょ。 それとも低域の締まりが不足してるように感じられますゥ・・・〔笑〕。
 
ただし、このカートリッジは、前回申しましたように、実際には内部インピーダンスが6 Ω であろうと推測されますんで、もしそうだとすれば、一般に言われるところのちょうど良い数値になり、音にモンダイが無いのは当然っちゃあ当然と言うべきでしょう。
 
そんなわけで、もうひとつ、これなら絶対大丈夫??!)という試聴をやってみました。
SPU Meister Silver の初代機です。

イメージ 1

このカートリッジも、実を言いますとカタログ上の内部インピーダンスがかなり変遷してまして、初代機は 1.5 Ω
だったんですが、現行の Mk II になった際にClassic と同じ 6 Ωとされ、それが今じゃオルトフォン社のサイトで 3 Ω となってます
 
諸元表の他のデータは一貫して同一ですので、この変遷ぶりも謎なんですが、この Meister モデルは銅線コイルを持ってた初代機からネオジム磁石を採用してますし、内部インピーダンスがかなり低くても 0.3 mV くらいの出力電圧があっておかしくありません。
 
いずれにしましても、銅線コイルの初代 Meister 1992 年、Meister Silver 1996 年の発売ですから、まさかいくらなんでも初代 SPU 式の旧表示を行なっていたとは考えにくい。
 
それよりは、むしろ逆に、自社の出してた SPU 用のトランス・・・例えばのす爺ィは持ってませんが SPU-T1 とか・・・の公表データとの整合性を踏まえて Mk II では 1.5 Ωよりも若干高めの 3 Ωを名乗らせることにしたっていう可能性の方が高そう。
それにしても信頼関係って大切ですね、一旦崩れるとすべてを疑われる結果になる・・・
 
・・・というわけで、この Meister Silver の初代機であれば、公表値からして SPU Classicよりも更に低く、恐らくは AU-S1 の公表対応インピーダンスから外れることは間違いないと思われます。
のす爺ィがこれなら大丈夫だろう〔笑〕と考えたのはこうした理由からです。
 
じゃ、この Meister Silver 初代機をやはり同じ AU-S1 に繋いだ録音を聴いてやって下さい。
例の長い曲ですが、日曜なんだしネ、まッ、お付き合いくださいや。

 
どうでしたぁ
こちらの場合も再生音に異常はまったく認められませんよね。
それとも、やはり低域の締まりが不足してますゥ・・・〔笑〕
 
この組み合わせは、のす爺ィの所有する中でも内部インピーダンスが最も低いカートリッジと、昇圧比がこれまた最も低いトランスのひとつということになります。
ですから、これで大丈夫だということは、すなわち、ロー・インピーダンス型のカートリッジを使うに当たっても入力インピーダンスが高過ぎる分には何ら問題は生じないということを意味してると言えます。
 
逆に入力インピーダンスが低過ぎるとどういうことになるのかは、既にこの過去頁で・・・
https://blogs.yahoo.co.jp/giovanni_xxiv/56795482.html ・・・お聴きいただいた通りです。
 
つまり、ここにもまた、ダイナミック・バランス型トーンアームはレコードの反りに強いというアレと同様の迷信あるいは都市伝説があったのだということです。
これはホンの数日前に至るまで、のす爺ィも何となく信じ込まされていた伝説でした。
 
疑問が湧いたのは拙ブログでのしんのすけ様とのコメントのやり取りを通じてでありまして、いやぁ、ブログというものの有難味をしみじみと噛みしめています。
もちろん、コメントを下さったしんのすけ様および、ブログというものの手ほどきをして下さった野晒与太郎師匠にはお礼の申しようもありません。
 
さて、ところで、この一般に言われるところの適切な入力インピーダンス・・・数十~100 Ω 程度とされてるらしい・・・なんですが、そいつの算定方法はどうなってるんでしょうか
それにまた、各メーカーの出してる昇圧トランスの対応インピーダンス値、あるいは切替スイッチにはどんな意味があるんでしょうか
 
まず、最適な入力インピーダンス値の計算と言いますか推測と言いますか、要するに特定のカートリッジを使おうとした場合のトランスの選択に当たっての目安ですが、のす爺ィはこれまでこの記事に書いてあるやり方に従っていました。
 
ちょっと長い記事ですが、今おしゃべりのテーマにしてる問題に興味のある方は、まず一読されることをオススメする次第です。
長いのは非常に懇切丁寧に言葉を尽くし、順を追って語っているからでして、要するに読者にとって分かりやすいようにっていう配慮からそうなってるだけですし、有益な情報も色々含まれてますんで・・・。
 
じゃ、今日はこんなとこで失礼しますね。
比較試聴に採用したパッティ・プラーヴォの長い曲についてもおしゃべりしたいんで、次回はそっちにも触れさせていただけたらと思ってます。
 
 

MC 用 昇圧トランス あれこれ_03

$
0
0
 
昔、どこだったかでホアン・ミロの展覧会が開かれた時に、会場を訪れたミロがひとつの作品の前に立ち止まって、「この素晴らしいミロを描いたのは誰だ?!って叫んだ、っていう話を聞いたことがありましたが、ココまで行くと・・・
これも一つの立派な芸術のような気がして・・・はこないか、やっぱ・・・〔笑〕。
 
さてさて、前回は極度に内部インピーダンスの低いカートリッジを、故意に昇圧比の低い、従って入力インピーダンスの高くなるトランスに繋いで聴いてみました。
 
あれは実験のためにやったことですが、実際のところ、多くのカートリッジが負荷インピーダンスの下限のみを指定していて、上限は特に限定していないように、トランスの方も組み合わせるカートリッジの内部インピーダンスに関しては上限のみを定めている場合が多い。
 
オルトフォンの SPU を例にとりますと、10-50 Ωという範囲指定をしている Synergy を除いて、他の現行モデルはみな負荷インピーダンス×Ω 以上という指定しかしていません。
それにしてもSynergy の上限指定は謎ですね。のす爺ィ的にはムチャクチャな製品にしか思えない。
   持ってはいるけど、まるで使いこなせてない・・・。
 
また、トランスの方も同様に、接続するカートリッジの内部インピーダンスに関しては、一応範囲指定をしているモデルもありますが、その範囲は非常に広く、実質的には完全にフリーとしているものが多い。
やはりオルトフォンを例にとりますと、Verto 5-50 Ωとか・・・

イメージ 2
 
ST-7 2-60 Ωといった感じです。

イメージ 3


なお、のす爺ィも愛用している Verto ですが、これは昇圧比が変えられるようになってまして、ロー・インピーダンス対応として 10 Ω 以下という選択肢がありますので、これとの使い分けという観点から、ハイ・インピーダンス対応では下限を一応 5 Ω としているものと考えられます。

ですので、実際には5 Ω よりももっと低い内部インピーダンスを持つカートリッジを、5-50 Ωの方に接続しても何ら問題はありません。
 
そのオルトフォンのカタログの中に ST-80SE というモデルが載ってまして、これには10 Ω以下という指定がされてます。
イメージ 4

このトランスは昇圧比が 27 dB となってますので、47 KΩ の入力インピーダンスを持つフォノ・アンプの MM 入力に繋いだ場合、カートリッジ側から見た入力インピーダンスはざっと 93 Ω程度になります。
 
まぁ、最低でもカートリッジのインピーダンスの 10 倍程度は欲しいよな・・・ってな感じでこのような指定が行なわれているんでしょう。
妥当な措置と言えます。
 
のす爺ィのやった例の実験の結果からすれば、印象としては 10 Ω どころか 6 Ω 以下くらいに制限しておいてもよさそうな感じです。
 
っというわけで、まァ、今チェックしたのはオルトフォンだけではありますが、メーカーの公式サイトで諸元を見る限り、やはり低インピーダンス型のカートリッジを昇圧比の低い、従って必然的に入力インピーダンスが高くなるトランスに繋ぐことに関しては、これを禁じることに繋がるような記述はありません。
 
ちなみに、Classic シリーズに最適とアナウンスされてる ST-7 の昇圧比は 24 dB となっており、これは今のす爺ィが繋いでいる AU-S1 22.3 dB とそう大きくは変わりません。
 
こうしたメーカーの公式サイトの情報を見るにつけても、低インピーダンス型カートリッジにはトランスで電磁制動を掛ける必要があるという定説 はやはり迷信であることが明らかと言えましょう。
 
一般的なアンプの MM 入力47 KΩに繋いだ場合、カートリッジからの入力インピーダンスは、ST-7 AU-S1 がそれぞれざっと 184 Ω 240 Ω になります。
これからしますと、前回お聴きいただいた SPU が調子よく鳴っていたのも実にワカル話ですよね。
 
更に申しますと、例えば仮にこの SPU T-30 に繋いだ場合、インピーダンス切替スイッチで選択するべきは言うまでもなく 24 Ω ポジションだということです。
 
イメージ 1
 
フォノ・アンプのゲインによっては 48 Ω という選択も充分にアリですが、SPU 2 Ω なんだから、これに一番近い 3 Ω を選択しなくっちゃ、などとは間違っても考えちゃダメです。
もちろん、6 Ω 12 Ω も適合しません。
 
もうお分かりいただけますよね、あの迷信がいかにキケンな落とし穴であるのか・・・。
日本でも各メーカーから LP プレーヤーのニュー・モデルが発売されるなど、アナログ・オーディオの復活が云々される昨今、このことはもっと広く知られるべきなんじゃないでしょうか。
 
かような迷信に惑わされて、低インピーダンス型のカートリッジを入力インピーダンスの低いトランスに繋いでしまった結果、フォノ・アンプへの入力電圧が過大になり、せっかくの高級カートリッジがその能力を発揮できずにいるというケースは実際にあちこちで起きているのではないかと想像されます。
 
前回ご紹介した Vinylengine 掲載の記事・・・
・・・は、こうした事態を避けるために、昇圧比の低いトランスを使いつつ、これとフォノ・アンプの間に適切な R を並列に入れることによって入力インピーダンスを調節することを推奨してますが、大なり小なり音質の劣化を伴う“使いこなし”であろうことは論を待ちません。
 
のす爺ィはこれはやってませんが、ただ、昇圧トランスの選択に当たっては、この記事に従って次のような基準に沿うようにしてました。
 
すなわち、それぞれのカートリッジの取説から、内部インピーダンス、および推奨されている下限の負荷インピーダンスという二つの値を取り出しまして・・・
最低指定負荷抵抗値最適負荷抵抗値内部抵抗値×10 最低指定負荷抵抗値
・・・という計算をしていたわけです。
 
ですが、そもそもコイルに適切な量の電流を流して電磁制動を掛けるべきであるという例の主張の根拠になるようなことは、記事のどこにも書いてはありません。
これは、いわば当然の前提とされているわけです。
 
明らかに日本のみならず米国でも例の迷信が定説化している様子がうかがわれます。
でも、つらつら考えてみますと、もしそんな主張が正しいのであれば、じゃあ、電磁制動の助けを借りることができないDL-103 のようなハイ・インピーダンス型のカートリッジは、どうやっても低音をうまく再生できないのか
ってェ話になってきますよね。
 
これひとつとってみましても、カンチレバーに電磁制動など掛かってはイケないのだ、ってことは容易に納得できるハズなのですが、のす爺ィはじめ、これまで多くの人々がこのような誤謬に陥って来たわけです。
 
そこで、ですね、おしゃべりは次の段階へと移って行きます。
単にこうした主張の誤りが明らかになっただけではなく、では一体なぜそのような誤謬が定説化するに至ったのかというところまでが判明しないことには、事件の全容が解明されたとは言えない。
・・・ っと、まァ、のす爺ィはしつこい人間なのですよ・・・ 〔笑〕。
 
が、続きは次回やるとして、今日のところはここらで失礼しますね。
じゃ、皆さん、お休みなさ~い。

最後に何か聴きますゥ
最近、パッティ・プラーヴォばっかりでしたんで、羊頭狗肉になっちゃってたヴァノーニでも行きますか・・・。
野晒師匠の絶賛なさってたQuesta notte c’èの入ってるアルバムUOMINI からタイトル曲のuominiを聴きましょうや
 
だけど、このレコード、SPU で掛けてみたら新品にも拘わらず歪むんですよ。
確か、前もラインコンタクトの針でうまく掛からずに歪んでましたよね。
 
どうも、この時期の vanilla 盤は品質にモンダイがあるのか、それとも神経質なのか・・・。
なので、あのカワイイ AR ES-1 で聴いてみませう。
 
イメージ 5
 
Black Widow V15 type III ね・・・、トランスのことは忘れて〔笑〕。
B 面の最後、アルバムを締めくくるタイトル曲uominiです。

 
うん、これだと一応キレイに掛かりますね。
Shure はこの時代でも既にトラッカビリティは超一流だった。
しんのすけ様がおっしゃってたように、やっぱのす爺ィは軽針圧のハイ・コンプライアンス機が好きみたいですね。
 
それに、やっぱヴァノーニはイイ
 
イメージ 6

解で、それでいてエ□くって、理知的でありながら情熱的で・・・。
 
この歌詞は、彼女自身とセルジョ・エンドリゴ、それにセルジョ・バルドッティの共作です。
野晒師匠ぉ~、聴いて下さってますゥ いかがですゥ、この曲は・・・〔笑〕
 
 
 

MC 用 昇圧トランス あれこれ_04

$
0
0
 
これ、感動的な記事です。
この事故のことは今でもハッキリ記憶してますし、ニュースに接した当時は、他人ごとながら非常な悲しみと激しい憤りを覚えました。
 
この被害者のお父様は実に立派な方だ。
のす爺ィには到底マネができません。
頭が下がります。 偉い・・・。
 
 
さてさて、低インピーダンス型のMC カートリッジは、入力インピーダンスの低いトランスに繋いで電磁制動によるコントロールを効かせないと低域に締まりが出ないという説が迷信であること自体は前回のおしゃべりで証明されたと思います。
 
ですが、では一体なぜそのような説がこれほどまでに流布しているのでしょうか
それにまた、だったら、なぜ入力インピーダンスの低いトランスが生産・販売されているのでしょうか
また、T-30 にはなぜインピーダンスの切替スイッチが設けられているのでしょうか
 
イメージ 2

低インピーダンス型の代表である SPU も実際の内部インピーダンスは 2 Ω ではなく 6 Ω であることがほぼ確実ですが、それならそれで、入力インピーダンスが 30 Ω 前後となるような MC トランスは一体どんなカートリッジのために存在しているのでしょうか
 
解かれるべき疑問はまだまだ尽きません。
ですので、今回のシリーズはまだまだ続きます・・・〔笑〕。
 
まず、少し遠回りになりますが、歴史的な事情から考えていきたいと思います。
のす爺ィの推測するところ、誤解の出発点には、すべての MC カートリッジ・・・いや、MC に留まらずあらゆるカートリッジの祖たるオリジナルSPU のあり方が大きく関係していたのではないかという気がするからです。
 
SPU には後の MC カートリッジの歴史を規定することとなった数々の特徴が備わっていましたが、そのひとつはコイルに鉄芯が入っているということでした。
これによって非常に強い磁場が形成されたことは言うまでもないとして、それにはとりわけ、低域の減衰を防止する効果が顕著だった。
 
ずっと後になって様々なモデルが登場することになる空芯タイプの MC 型というのは、希土類系のマグネットが登場する以前は出力電圧が全般的に小さいことに加えて、この低域の減衰が大きなネックになっていました。
一方、初期の SPU については、しばしば「重戦車のような・・・」とかナントカいう類の形容がなされます。
 
こうした形容はとりわけ GT モデルについて行なわれていたようでして、それは低域の量感が豊かでいわゆるピラミッド型の周波数特性を持っていただけでなく、非常な高出力を誇っていたことにもよるものと思われます。
 
出力電圧はこれまた資料によって若干の差があり、Vinylengine のデータ表では 10 mV となっているのに対し、別の資料では 7 mV になります。
 
Vinylengine のデータ表では、これに加えて針圧が 2.0-3.0 g とされておりまして、これは 50 年代に SPU が登場した際の数字でした。
ですので、出力電圧の 10 mV というのも、当時のオリジナル SPU のものだった可能性があります。
 
一方、7 mV という数字はオルトフォン社が発表したテクニカル・データに見ることができます。
  
イメージ 1

こちらは針圧の表示はありませんが、コンプライアンス値が vinylengine 10-6 cm /dyne に対して
8-6 cm / dyne に低下しており、針圧が3.0-5.0 g という現在のスペックにはこれが関係しているのかもしれません。
 
また、データの採られた 1994 年という年代からしますと、ちょうどこの年に登場したClassic モデルのデータであると見て間違いないでしょう。
 
が、いずれにしましても、7-10 mV という大変な高出力を誇っていたわけです。
SPU-GT のこうした高出力に関しましては、少年時代ののす爺ィがある御方から貸していただいてしばらく使った記憶の中にも非常に鮮明に残っています。
 
今、仮に SPU-GT の出力電圧を低い方の 7 mV、またトランスなしの SPU のそれを 0.2 mV としますと、内蔵トランスによる昇圧比は 35 倍・・・ざっと 31 dB あったことになります。
 
この数値は、また 2.1 KΩ とされている SPU-GT としての内部インピーダンスによっても裏づけられます。
ムービング・コイルのインピーダンスを 2 Ωとしますと、トランスを通したそれが 2.1 KΩならば、1050 倍ということになり、これの平方根が約 32.4 だからです。
 
このような特性のトランスを内蔵すれば、当然、入力インピーダンスは低いものにならざるを得ず、これを 47 KΩ MM 入力に繋ぎますと、カートリッジのムービング・コイルから内蔵トランスへのそれはおよそ 38 Ω という計算です。
 
これが、もしオリジナル SPU-GT には本当に 10 mV の出力があったのだとしますと、昇圧比は34 dB にもなり、内蔵トランスの入力インピーダンスは 19 Ω 以下というトンデモナイ値になります。
 
ともあれ、以上のような細かい数字はさておくとして、いずれにせよ、GT モデルが非常に昇圧比の高いトランスを内蔵していたことは間違いありません。
のす爺ィは、このことが後々に至るまで SPU を含めたロー・インピーダンス型 MC カートリッジのイメージを決定づけることになったのではないかと考える次第です。
 
繰り返しになりますが、要するにSPU の備えていた低音の力強さというイメージが、それの組み合わされていたトランスとも重ね合わされ、入力インピーダンスの低さと力強い低音という二つの要素が結び付けられる結果となった・・・、とまァ、こういういきさつです。
 
もちろん、こうした昇圧比の高いトランスをシェルに内蔵することによってムービング・コイルを流れる電流の量は多くなり、トランスからの電磁制動も当然かなりのものになったであろうと推測されます。
 
ですが・・・、元々 SPU は振動系の物理的なコンプライアンスが低いカートリッジでした。
いや、発表当時としては、むしろコンプライアンスは高い方だったのかもしれません。
初期の LP レコードならば 2.5 g の針圧でトレースしたと言われています。
 
現在の SPU Classic Meister Silver 4 g を指定しているのは、先に触れたコンプライアンス値の低下によるのではなく、LP 全盛期のもっと進化したレコードに対応するためだという説もあるようですので・・・。
が、いずれにせよ、絶対的な意味では、SPU のコンプライアンスはそれほど高いものではありません。
 
ですので、たとえ電磁制動によってコンプライアンス値が更に押し下げられたとしても、その分のパーセンテージは限定されたものに留まり、針圧を若干増す程度で十分にコンペンセートすることが可能だったのではないかと思われます。
 
で、こうした“のす爺ィ仮説”を検証するためには、SPU を入力インピーダンスの低いトランスに繋いで実際に鳴らしてみればイイわけです。
つまり、先日、MC20 supreme でやってみた実験の、特に、低インピーダンスでミス・トラッキングが起きたのと同様の条件で同じレコードを掛けてみて、うまくトレースできるのかどうかを確かめるということです。
 
もし“のす爺ィ仮説”が正しいならば、たとえ電磁制動が働いたとしてもSPU ならば何らの支障なく鳴ってくれると考えられます。
で、もしそうとなりますと、T-30 3 Ω ポジションはもっぱら SPU のため・・・か、あるいは SPU と同じくらいコンプライアンスの低いカートリッジ・・・ あんまり思い浮かびませんが・・・ のためのものなのだということです。
 
もちろん、そうしたカートリッジも、もっと高いポジションで問題なく鳴るはずですし、ですから、3 Ω 6 Ω といったポジションで使うことに音質上のメリットは何もありません。
 
じゃあ、一体どんなメリットがあるのかと言えば、それは音質ではなく音量(・・・と、強いて言えば S/N 比)の上でのメリットです。
つまり、ゲインの低いフォノ・アンプと組み合わせた場合には、入力インピーダンスの高い、従って昇圧比の低いポジションですと充分な音量が得られず、S/N 比の上でも不利になるわけです。
 
そこで、のす爺ィは、SPU が登場したころのフォノ・アンプはゲインが低かったのではないかと考えまして、当時の代表的なプリ・アンプである McIntosh C22  Marantz #7 の諸元を調べてみました。
 
イメージ 3
 
これらはプリ・アンプですので、フォノ・イコライザー部分のデータだけが独立に示されているわけじゃありませんが、Phono 入力のゲインから AUX 入力のそれを差っ引いて得られる値はどちらも 42 dBでした。

ですので、決して低かったわけじゃないんですが、オーディオ・システム全体としては、当時はとりわけ充分な
S/N 比を確保するために今よりも高い入力電圧が求められていたのかもしれません。
この辺に関しましては識者の方のご意見がいただけると嬉しいところです。
 
・・・ということで、今日はこのあたりのことを確認するべく、SPU T-30 に繋いで、インピーダンス切替をやりながら同じレコードを鳴らしてみたいと思います。
ただ、それをやるためにはトランスを繋ぎ換えなくちゃなりませんし、今夜できるかどうかは心許ない。
 
まァ、気になるんで、これから試してみたいとは思いますが、いずれにしても、ブログでのご報告は次回になります。
じゃ、今日は録音もナシです。
おしゃべりに時間が掛かった上に、しんのすけ様からのコメントにも考えなきゃならないモンダイが含まれてましたんで・・・。
 
 

MC 用 昇圧トランス あれこれ_05 (結論)

$
0
0
 
これまでのおしゃべりには少し分かりにくいところがあったみたいで、あのしんのすけ様さえもがちょっと誤解をしてらっしゃったんで、のす爺ィもちょっと反省しまして、もう一度、結論だけをかいつまんで述べたいと思います。
 
誤解を招いてしまったのは、MC カートリッジに組み合わせる昇圧トランスの入力インピーダンスが適切かどうかを判断するための次のような方式です。
最低指定負荷抵抗値最適負荷抵抗値内部抵抗値×10 最低指定負荷抵抗値
 
これはのす爺ィの提唱する方式ではなく、Vinylengine の下記頁が推奨しているものですが・・・
 
のす爺ィの主張というのは、この方式のベースとなっている、「電磁制動による振動系のダンピングが有益である」とする考え方を否定するものでして、当然のことながら、上記の方式も、これを無効であるとするものです。
 
MC カートリッジにとって振動系に働く 電磁制動は常に有害である、というのがのす爺ィの主張なのです。
 
ですから、どのような MC カートリッジであれ、内部インピーダンスの値を問わず、トランスの入力インピーダンスは高くて OK であり、SPU をはじめとするロー・インピーダンス型のカートリッジを、DENON AU-S1 のようなハイ・インピーダンス用のトランスと組み合わせることには何の問題もありません。
 
問題があるとしたら、それは飽くまでも出力不足ゆえに充分な音量が得られなくなるということであって、フォノ・アンプのゲインが充分に高ければこうした問題は生じませんから、良好な再生音のためには トランスの入力インピーダンスはむしろ高い方が望ましい・・・と、こういうことです。
 
これは、ネットはおろか機器の取説に至るまで誤謬・誤解が根強くはびこっている事柄ですので、のす爺ィごときがブログで発言していたところで世の中の大勢が変わるワケもありませんが、それでも事実は事実として明確に主張しておきたいと思います。
 
 
さて、以上のことはこれまでの頁をお読みいただければ既に書いてあることばかりですが、今回やってみようとしているのは、では一体なぜ 低インピーダンス用 と銘打ったトランス が市場に存在するのか、また、しんのすけ様も愛用なさっている AU-340 のように 低インピーダンス用 のポジションを備えたトランス が用意されているのか、という件についての実験です。
 
のす爺ィの説を申しますと、これはいわば必要悪と申しますか、万やむを得ぬケースのための 苦肉の策 に過ぎず、決して積極的な意味を持つものではないのだ、ということになります。
 
つまり、極端に言いますと、多かれ少なかれ音質を犠牲にしてでもとにかく必要な音量を得るために昇圧比の高いトランスを使うことを余儀なくされた、出力電圧の非常に低いカートリッジのための、いわば次善の手なのだ、ということです。
 
ですから、そうしたトランス、もしくはそうした切替スイッチは、低インピーダンス用というよりも 低出力用として理解するべきものであって、たとえ内部インピーダンスが非常に低いカートリッジであっても、出力電圧さえ充分に取れるならばハイ・インピーダンス用のトランスに繋ぐのが正しい使用法であると、こーゆーことになります。

実際の話、松平吉男氏のマイソニック・ラボのように、「インピーダンスは低く、出力は高く」 をモットーにして、そのような特性のカートリッジを実現しているメーカーが用意しているトランスは、決して昇圧比が高くありません。
現在の主力機も 26 dB ですし、一世代前のモデルは 22 dB というものでした。
 
なんとなれば、ムービング・コイルに働く電磁制動はトレース能力に悪影響を及ぼしこそすれ、良いことは何もないからです。
こうした悪影響は、しかしながら、とりわけハイ・コンプライアンス型の場合に顕著に現れるものと推測されるわけで、実際、のす爺ィがこの頁で実験したところMC20 supreme では破滅的な結果になりました。
 
ですが、コンプライアンスの低い SPU ならば、こうした電磁制動の悪影響も目立った形では現れないだろうというのがのす爺ィの予想だったわけです。
これに関連してふと思ったのは、DL-103 が 40 Ω というハイ・インピーダンス設計になっていた背景には、出力電圧を高めるためというだけでなく、軽針圧の追求という意味があったのかもしれないということでした。

同様に、SPU のコンプライアンスが低いのも、この問題に関係があるのではないかと思います。
つまり、軽針圧設計では昇圧比の高いトランスからの電磁制動の影響を物理的に排除することが困難だということです。

ともあれ、SPU ならば低い入力インピーダンスで鳴らしても大きな問題は起きないだろうと予想しているのですが、今日、ちょっと気になる報告が飛び込んで来ました。
 
それは、他でもないしんのすけ様のブログで、オリジナル SPU DENON AU-340 に繋いで実験したところ、これまで使用していた 3 Ωポジションと、新たに試してみた 40 Ωポジションの間には顕著な違いが認められたという話です。
 
これは少々困ったことになる可能性が出てきました。
もし、そのご報告が当を得たものだとしますと、あの SPU-GT / GTE というモデルが、ある意味、一種の欠陥商品だったことになりかねません。
 
つまり、こうしたトランス内蔵モデルと素の SPU を外付けトランスに繋いだ場合とでは音が違っていた可能性が浮上するわけです。

・・・ と心配していたら、しんのすけ様からコメントが入りまして、どうも 3 Ω ポジションで聴く SPU もそれほどヒドイ音だったわけじゃないみたいです。 ホッとしました。

まッ、とりあえずはのす爺ィも自分の SPU Classic GE T-30 を使って実験してみたいと思います。
まず、T-30 の切替スイッチで 3 Ωポジションを選択しても大丈夫なように、これをゲインの低い LUXMAN
E-1 MM 入力に繋ぐことにします。
 
こうするのは、MC20 supreme でやったと時と条件を揃えるためでもあります。
のす爺ィは、こういう繋ぎ換えができるだけやり易いように色んな長さのケーブルを用意してまして、アース線もクルマ用いじり用の端子を使ってソケットの抜き差しで交換できるようにしてますので、機器の入れ替えはスペースさえ許せばさほど面倒じゃありません。

 

イメージ 1

なので、TD 126 Mk III LUXMAN E-1 との間に噛ませていたトランスを T-1000 から T-30 に交換すると同時に、トーンアームからは MC20 supreme を外して SPU Classic GE に付け替えました。
 
ご記憶ですかね?トーンアームの AT 1503 はちゃんと SPU が取り付けられるよう考えてその位置を決定してました。
深謀遠慮の甲斐があったというもの・・・〔ニンマリ〕。
 
さて、ここまではイイとして、実験に使うレコードが若干モンダイ。
あの時にミス・トラッキングを経験したのと完全に同じ条件にするためには、今度もパッティ・プラーヴォの Sì...
incorerenza で試す必要があります。
 
が、大事なレコードはあんまり使いたくない・・・。
ただ、ここまでご説明してきたような理屈からしますと、ロー・コンプライアンス型の SPU に充分な針圧を掛けてやれば、他の条件は同じでも今度はうまくトレースしてくれるはずです。
 
プレーヤー・フェチのす爺ィの名誉が掛かってる実験ですので、ここはひとつ勇気を奮い起して、あの貴重盤で同じ曲を掛けることにしましょう。

イメージ 2

実を言いますと、あの後、ホンモノのオリジナル盤がベルリンのショップから届いてまして、これが抜群のコンディションでしたんで、この再発盤の方にはちょっとムリを掛けさせてもらっても、まッ、イイかなと・・・
 
では、行ってみますネ。
おそるおそる T-30 3 Ω ポジションにしての演奏です。
あっ、針圧はキチンと 4 g 掛けました。
 
 
うむ、結構、結構、のす爺ィの予想通り、ミス・トラッキングなどは起きてませんね。
音も決して悪くない。
 
やっぱり、こういうロー・コンプライアンス型のカートリッジであれば、電磁制動の悪影響は排除できると考えて間違いないでしょう。
ですが、どの程度のコンプライアンスであればイケるのかは分かりませんし、いずれにせよ、トランスの昇圧比は可能な限り低く抑えるべきです。
 
ということで、今度は前回使わなかった 24 Ω ポジションで掛けてみませう。
48 Ω ポジションまで行きますと音量がかなり小さくなりますし、それに 24 Ω ポジションで昇圧比は 23 dB となり、AU-S1 とも近く、のす爺ィ的には内部インピーダンス 6 Ω SPU にちょうど良さそう。
 
3 Ω ポジションであの調子ならここでうまく鳴ることはハナから分かっていますが、気になるのは 3 Ω ポジションの場合との音質の差です。
しんのすけ様は、AU-340 40 Ω ポジション(昇圧比は 20 dB ね・・・)との間に結構な差を感じるとおっしゃってるわけですが、のす爺ィのところではどうなんでしょうか。
 

いかがですゥ
もちろん、音量はかなり下がりますんで、これはほぼ同じになるよう録音時に調整してます。
 
こっちのほうが僅かに高域が強調されてるような気がしますが、そんなエライ違いは感じられません。
が、この辺ですかね、低域の出方がどーのこーので入力インピーダンスを低くしたがる方がおられるのは・・・。
この程度の違いは、トランス内蔵の GT モデルと、そうでないのを外付けトランスで使った場合の違いにもあった可能性がありますよね。
 
というわけで、しんのすけ様のところと違う結果になったのは、使ったレコードから何からすべて条件が異なるからでしょうけど、実験としては至極満足のいく結果となりました。
メデタシ、メデタシ
 
これですべて確定ですね。
MC カートリッジに電磁制動を掛けるのは間違いです。
 
だから、コムズカシイ理屈はキライだっとおっしゃる方に申し上げるべきは・・・
カートリッジがどんなタイプのものであろうと、
 充分な音量が得られる範囲で、昇圧トランスは常にできるだけ昇圧比の低いものを使う
切替スイッチがある場合も可能な限りハイ・インピーダンスポジションを選択する
 
と、こーゆーことになります。
じゃ、皆さん、今後はこういう方針でトランスを選択してくださいネ・・・。
 
 

MC 用 昇圧トランス あれこれ_06 (続き)

$
0
0
 
この件に関しましては前回で結論が出たわけですが、その前回の頁にいただいたしんのすけ様からのコメントに返信しながらなぁ~んか妙な感触が残りましたんで、もう一度そのコメントをキチンと読み直したところ、ここにも誤解があったことが判明しました。
 
ので、ご訪問下さる他の方々にもあるいは同じような誤解が生じてのす爺ィの真意が伝わっていない可能性があるような気がして、もう一度、今回のテーマの後半の議論をかいつまんで述べさせていただきたいと思います。
 
まず、モンダイのコメントですが、前後のコンテクストなしにそこだけ読んでも何のことか分からないと思いますが、話題になっているのは、クレヨン邸のオリジナル SPU に関することです。
 
前日の晩、その SPU に繋いである AU-340 をいつもの 3 Ω ポジションからのす爺ィオススメの 40 Ω ポジションに切り替えて試聴なさったしんのすけ様は、それが見違えるほどよく鳴るようになったと言って興奮なさった。
 
しかし、よくよく聴いてみると、違いはあるものの必ずしも単純に良くなったというわけではなく、やはりコイルにある程度の電流が流れるような状態がベストであるような気がしてきたと・・・。
で、ここまではイイのですが、それがのす爺ィの意見に対する反論に繋がるので、これを記事にしようかしまいか思案中だと、こうおっしゃってるんですよね。
 
思案中というのは、別にのす爺ィに気を遣って迷っている・・・という意味ではなく、理論的にはのす爺ィの言う通りだが、聴感上の印象は必ずしもその結論と一致しないので、その辺りの事情がどうなっているのかをハッキリさせないうちは記事にする気になれないと、まぁ、こんなことなんだろうと想像されます。
 
ですがね、しんのすけ様のこうした印象のす爺ィブログの主張と一致しないどころか、見事に一致してます。
しんのすけ様は、電磁制動をめぐる誤謬がなぜこうも流布することになったのかという後半部でやった考察を、前半部の議論とごっちゃにしてらっしゃったんですよ。
 
ハッキリさせておきたいのは、電磁制動が常に有害であるという前半の議論は決して間違ってないという点です。
これは声を大にして繰り返し言っておきたい。
 
で、一方、後半における考察は、そうした有害な電磁制動をあたかも必要なものであるかのようにみなすという誤謬が世の中に蔓延することになったのは、SPU の例が、とりわけ GT モデルを通じて一般化されてしまったからなのだと、こういうハナシだったんですよ。
 
だから、その特殊な例である SPU を取り上げて、電磁制動が必ずしも有害なばかりじゃないヨ・・・みたいなことを言っていたのでは、同じ誤謬をもう一回繰り返すことになっちゃう。
 
しんのすけ様ご自身は、あのコメントをした時点で陥っていた誤りに既に気づいておられるのではないかと思うのですが、それにも拘らずのす爺ィがこうした指摘をさせていただいてるのは、しんのすけ様のおっしゃることを聞いた人々がこうした誤謬をさらに増幅させる恐れがあると感じてるからです。
 
のす爺ィブログに世の誤りを正すほどの力が無いことくらいは十分以上に承知してますが、でも、逆に僅かなりともそうした誤りをより強固にするような方向に働くことだけはゼッタイにイヤだからです。
 
なので、もう一度繰り返します。
MC カートリッジにとって電磁制動は有害です
SPU が例外だったに過ぎません。
 
で、その例外だった SPU のケースが一般的なものだと信じられちゃったところに誤謬の出発点があった・・・と、こーゆー話なんですよ。
 
ちなみに、SPU に限った話をすれば、GT モデルでなくても、そもそも相当に高い昇圧比のトランスと組み合わせることを想定した設計方針があったと思われますから、電磁制動の影響はどの道排除できないと見て、当初からそれを見越した音作りをした可能性もあります。
 
もしそうだったとすれば、SPU に関しては、入力インピーダンスの低いトランスを組み合わせた方が音がイイという感じ方をする人がいても全然おかしくはありません。
が、これは飽くまでも SPU の場合のハナシであって、低インピーダンス型 MC 一般に拡大できるようなことじゃあない。
とりわけ、後のハイ・コンプライアンス世代のカートリッジにあっては、も~まるで通用しない考え方です。
 
だから、昇圧トランスの入力インピーダンスを なるべく高く というのは正解
くどいようですが、SPU の場合は好みに応じて低くしても構わないでしょう。
ですが、これはコンプライアンスの低いSPU だけのハナシ! OK? ・・・
 
んも~、これだけ言ってもまだ聞こうとせんヤツは知らん
勝手に悪い音聴いて、テメぇのレコード傷めてやがれ・・・〕。
 
・・・というわけで〔笑〕、のす爺ィはこうした新たなる知見に基き、みすからの所有するすべてのプレーヤーについて接続する昇圧トランスの見直しを行ないました。
今日はそのご報告です。
 
まず、実験に使ったターンテーブル TD 126 Mk III は、以前の状態に・・・ MC20 supreme + T-1000 という組み合わせに戻しまして・・・
  
イメージ 3

一方、SPU Classic GE TD 160 + AU-S1 に戻しました。
これはご存知の通り AU-S1 を介して、ゲインの高い Vanguard II に接続されてます。

イメージ 2
 
SPU と言えば、もう一台TD 125 MkII もまた、こちらは例の大騒ぎをして取り付けた RS-212D が載せてありますので、これもチェックしました。
少し前からトランスは Lundahl 製のヤツを組み合わせてます。
 
イメージ 1

これは昇圧比が 28 dB ありますんで、T-1000 26 dB より少し高めなんですが、それでも LUXMAN E-1に入力すればちょうどイイ音量になります。
このアンプで 50 KΩ を選択すれば入力インピーダンスは80 Ω という計算になりますので、内部インピーダンスの値が結局よ~ワカラン SPU シリーズでも支障は無いでしょう。
 
ところで、この E-1 っていうフォノ・アンプは MM 入力のインピーダンスが、34 KΩ / 50 KΩ / 75 KΩ 3 段階に切り替えられるようになってます。
のす爺ィはアンプのことはサッパリ分からないのですが、まァ、これを信用するならば、例えば 75 KΩ を選択すれば、トランスへの入力インピーダンスは計算上 120 Ω まで上昇するハズです。
 
この際ですので、この切り替えも実際にやってみましょう。
カートリッジは公称インピーダンス 1.5 Ω SPU Meister Silver 初代機です。
もうイイ加減パッティ・プラーヴォはオシマイにして、ヴァノーニで行きますね。
例のアルバム UOMINI からB 2 曲目のla donna cannibale

 
入力インピーダンスが変化しても昇圧比が変わるわけじゃないんで、当然ながら音量はまったく変わりません。
一方、音質は・・・
う~ん、こっちも変わらんような気がするなぁ~。
 
アンプの入力インピーダンスが変われば、当然、それに伴ってトランスへの入力インピーダンスも変わるような気がするんで、コイルを流れる電流の量も変化して、例の電磁制動の効き方が変わってくると思うんですが・・・。
この変化はやはり SPU では現れにくいということなんでしょうか・・・
まぁ、この実験をするんなら SPU じゃなくもっとハイ・コンプライアンス型のヤツにしなきゃダメですわな。
 
ともあれ、音質・音量ともにバッチリですので、このプレーヤーにこのトランスという組み合わせは、フォノ・アンプが E-1 である限り適切であることが確認できました。
 
が、それはそうと、この曲の歌詞も結構エ□いなぁ・・・。
このアルバムの表紙の写真ではヴァノーニが水兵帽をかぶってまして、これは A 2 曲目のil marinaioっていう曲にちなんだものなんですが、この曲は野晒師匠に教えてもらった情報サイトによると歌詞がエ□過ぎるってんで放送禁止になったみたい。
 
だけど、のす爺ィ的にはこっちのla donna cannibaleの方がずっとエ□い感じがする。
この歌を聴いてて、昔ある人から聞いた話を思い出しました。
 
とある日本人の男性に向こうで親しくなった女性がいて、帰国後しばらくしてから、彼女が日本に遊びに来たんだそうです。
で、その女性が到着した日の翌朝のこと、彼は絶品の朝フェ○で目覚めさせられて天国の気分を味わいまして、これからしばらくはこういうゴキゲンな朝が迎えられるんだ・・・ってんで有頂天になった。
 
ところが、その後スグに判明したことには、彼女は典型的な夜型人間で、朝は彼が仕事に出た後まで爆睡しちゃってて、起こそうとしても起きない。
じゃ、あの朝は一体何だったんだってェハナシになるわけですが・・・、何だと思いますゥ
答えは、時差ボケ・・・〔笑〕。
 
まッ、このヴァノーニの歌はそんな小噺を思い出させるような内容です。
 
 

MC 用 昇圧トランス あれこれ_07 (仕切り直して)

$
0
0
 
前の頁のコメント欄にいただいた質問を見て、のす爺ィ、ちょっと反省させられました。
今回のテーマは、降って湧いた自分自身の疑問から何の前置きもなしにいきなりおしゃべりを出発させちゃいましたんで、いろんな意味で議論の前提条件になる情報が欠落しちゃってました。
 
エッ お前のおしゃべりは今回に限らずいつだってそうだぞ、って
うん、、もっともなご指摘で・・・。
 
が、ともあれ、ハナシを今回のテーマに限らせていただくとしてですね、まず MC カートリッジと昇圧トランスのインピーダンス・マッチングってのはそもそもどーなってるんだってところから出発するべきでした。
そうしなかったがために、しんのすけ様を含めてご訪問下さった方々には様々な誤解を引き起こしてしまった可能性がありますので、そうしたケースに関しましては率直に陳謝する次第です。
 
いつも話題の転換の目安としてます十回目までには、まだ 4 回もありますんで、ちょっと仕切り直して初心に立ち返ってみたいと思います。
 
なお、のす爺ィ自身、まったくの素人ですので、オカシナことやてんで間違ったことを言ってしまう可能性がかなりあります。
何かお気づきの点等がございましたら、どうかご指摘いただければ幸いです。
勝手なお願いですが、何卒よろしくお願い申し上げます。
 
 
さてさて、まずもって、オーディオ関係の他の分野・・・とりわけ増幅器等に関しましてはのす爺ィは何も知りませんので、ハナシは MC カートリッジと昇圧トランスのことに限らせていただきますけど、ここで言うインピーダンス・マッチングというのは決して厳密なものじゃありません。
 
っていうか、そもそもインピーダンス自体が周波数によって激変しちゃうわけですから、それのマッチングと言ったところではなはだイイ加減なものにとどまらざるを得ません。
ですので、カートリッジの内部インピーダンスにせよ、またトランスの対応インピーダンスにせよ、カタログに書いてある値は、それがどのような周波数でのものにせよ、飽くまでもひとつの目安に過ぎません。
 
で、そうした前提の上でのことですから、「マッチング」というのも、これまたイイ加減なハナシであって、ピッタリと合ってるなどという意味では全然ありません。
こんなことを敢えて強調するのは、前にちょっと触れたんですが、このマッチングを注文に応じてひとつひとつピッタリと合わせてトランスを制作するんだとか言って法外な値段で売っているらしいサイトをたまたま見たからです。
 
いずれにしましても、そんなわけでどうせ「マッチング」など取れるワケはないんでして、だからマトモな音さえ出ていればそれで OK という割り切りが必要です。
また、この「マトモな音」っていうヤツ・・・、これは音質面のみならず音量についても言えるわけで、のす爺ィの場合、今回の議論の出発点はむしろ音量の面でのマッチング問題でした。
 
ただ、MC カートリッジと昇圧トランスの間のマッチングを問題にする場合、実際のハナシ、インピーダンスのマッチングよりも音量・・・つまり出力電圧のマッチングの方がずっと重要です。
なんとなれば、そもそも昇圧トランスが必要になるのは、この出力電圧のマッチングをとるために他なりません。
人生、何事につけても優先順位というのは非常に重要ですよね・・・。
 
つまり、昇圧トランスを用意するに当たりましては、インピーダンスなんぞよりも適切な出力電圧を確保することの方がずっと重要だってことです。
これ、至極当然のことなんですが、ともするとプレーヤーをあれこれ弄ってるうちに、つい失念してしまいがちなんですよ・・・〔笑〕。
 
ということで、MC カートリッジと昇圧トランスの組み合わせに当たってまず第一に重要なのは昇圧比です。
トランスのカタログには対応するカートリッジの内部インピーダンスの範囲が示してあるのが普通ですけれども、そういう意味で、これはさして重要でもなければ正確なものでもありません。
飽くまでも目安と考えるべきものです。
 
一方、昇圧比の方は、基本的にトランスの巻数比によって決まりますので、理想的な状態では周波数を問わず一定ですし、また正確な値が記されていると考えられます。
 
現実のトランスにあっては、もちろん磁束の漏れもあればコイルの内部抵抗もあるので、巻数比がそのまま昇圧比とイコールにはなりませんが、それはエンジニアが考えることであって、のす爺ィはじめ一般ユーザーが気にしなければならないことではありません。
 
なので、ユーザーとしては、まずはトランスのカタログにある昇圧比を見て、使いたいカートリッジの出力電圧がどの程度になるのか見当をつけるのが第一歩ということになります。
 
昇圧比の値は普通、対数表示で dB と書いてあります。
dB デシベルというのは倍率を示すのに使われる表示法ですので、この場合はトランスの一次側入力電圧と二次側出力電圧の比を表わしてます。
 
つまり、使われるカートリッジの出力電圧と、トランスを経た後の出力電圧の比という意味です。
10 倍になるときに 20 dB と表記することになってまして、DL-103 用の DENON のトランスがちょうどこの値の昇圧比を持ってます。
DL-103 の出力電圧は 0.3 mV と発表されてますから、これを AU-320 40 Ωポジションで使いますと、トランスからの出力はちょうど 10 倍の 3 mV になります。
 
3 mV といえば、普通のアンプの MM 入力が求める入力電圧に相当しますから、これでちょうどヨシってことになるわけです。
 
前の頁のコメント欄で質問して下さった方はアントレの ET-200 というトランスをお使いとのことで、これの昇圧比は 30 dB と発表されてます。
 
対数表示ですので DENON 20 dB のトランスの 1.5 倍というわけではなく、プラス 10 dB と考えますので、この分がおよそ 3.17 倍に相当することから、20 dB (=×10) 10 dB (×3.17) で、都合 31.7 倍になります。
 
つまり、このトランスを使いますとカートリッジの出力電圧を 31.7 倍に昇圧してくれるということで、DENON
20 dB のトランスに比べて三倍以上の昇圧比になるわけです。

ここで、アントレのカートリッジのスペックを例の某サイトで見ますと、出力が 0.20.25 mV 辺りのものが多いことが分かります。
ですので、これらを同社の ET-200 を通しますと、約 68 mV という出力になります。
 
MC 用昇圧トランスの目的は、飽くまでもこのように出力電圧を上げるというものです。
飽くまでも・・・などとのす爺ィが強調するのは、決してインピーダンス・マッチングのためのトランスではないということを言いたいがためです。
 
のす爺ィは、オーディオの世界でトランスのハナシがややこしくなる原因のひとつに、パワー・アンプの出力トランスの存在が関係しているのではないかと考えています。
こちらは昇圧を目的としているのではなく、スピーカーのインピーダンスにアンプの出力インピーダンスを合わせるためのものでした。
 
・・・でした、という過去形にしたのは、最近ですと OTL のトランジスタ・アンプが普通なので出力端子は一つ、っていうか一対だけになってるからです。
ですが、昔の真空管アンプには、スピーカーのインピーダンスに合わせて繋ぎ替えるよう、+端子が三つくらい並んでいました。

イメージ 1
こうしたアンプの出力トランスと、MC カートリッジ用の昇圧トランスは、それぞれ音の入口と出口でいずれもトランスデューサーに直結してますんで、オーディオ・マニアの頭の中で両者のイメージが接近しちゃった可能性があるのではないかと・・・。
これにつきましては、しんのすけ様のブログに寄せられたコメントを見てて、ふとそんな印象を持ちました。
 
ともあれ、MC 用の昇圧トランスはアンプの出力トランスとはまったく機能が違いまして、そのインピーダンスは昇圧比が決まった後に単に結果として出てくるものに過ぎません。
 
まァ、設計する人はインピーダンスのことも念頭に置きながらやっていくでしょうけど、決してそれが先にあるのではなく、まずは昇圧比を設定する必要に迫られているわけで、インピーダンスはそれに伴って必然的に決まってしまうのです。
設計者が自由に設定できるものじゃありません。
 
ふーッ・・・っと、ずい分しゃべり散らしましたんで、今日はここらで失礼しますね。
 
実は、10 台のプレーヤーのうち、SPU 用の 2 台は既にチェックしましたんで、続いて DL-103 シリーズ用と、オーディオ・テクニカの AT33 シリーズ用のヤツに繋ぐトランスのことをご報告しようかと思ってたんですが、それはちょっと後回しにしまして、とりあえずは検討のための前提条件を形成するお話をさせていただくことにしました。
 
じゃ、写真も録音もナシで文字ばっかりと、ちと寂しい頁になっちゃいましたけど、どうか悪しからず。
 
 
 
Viewing all 620 articles
Browse latest View live




Latest Images